【試乗】新型 フェラーリ プロサングエ|その走りはスーパースポーツカー、つまりは紛れもなくフェラーリだった!
カテゴリー: フェラーリの試乗レポート
タグ: フェラーリ / SUV / プロサングエ / EDGEが効いている / 西川淳
2023/04/08
▲伝統のV12自然吸気エンジンをフロントミッドに搭載。フェラーリが“4ドア4シーターのスポーツカー”と呼ぶラグジュアリーSUVがプロサングエ。革新的なサスペンションシステムにより、背の高い4ドアモデルでも従来の2+2モデルと遜色ないパフォーマンスを実現するまったく新しいアクティブサスペンションがキモ
プロサングエをついに試すときがやってきた。マラネッロはプロサングエのことを決してSUVとは呼ばない。確かにその車高は、大型スーパーSUVとしては車高の低いランボルギーニ ウルスやアストンマーティン DBXに比べてさらに低く、サイズ感を無視すれば大径タイヤを履いた妙にどでかい5ドアハッチバックと言えなくもない。
けれども実物を目の当たりにするとさすがにかなり大きい。車高は1.59mとしっかりあり、全長や全幅は4シーターモデルのGTC4ルッソに近いから、これはもうどう見てもSUVの部類に入る。マラネッロが違うといくら主張したところで、そう見えるものは仕方ない。
しかし、ひとたびプロサングエに乗ってみれば、なるほど確かにその走りはSUVではないことを知る。まさにスポーツカー、つまりはフェラーリだった。
▲エアロダイナミクスを向上させるボンネット上のエアロブリッジや、ヘッドライト上部のエアインテークなどが備わる
▲エンジンをフロントミッドに、ギアボックスをリアに配置することで、フロントミッドのフェラーリが最適としている前後重量配分49:51を実現プロサングエは、伝統のV12自然吸気エンジンを完全フロントミッドに搭載し、8速DCTをリアアクスルに組み合わせたトランスアクスル方式とした。このパッケージがすでに他とはまるで違う。12気筒エンジンを積み、あまつさえそれを完全フロントミッドにするSUVなどいまだかつてなかった。
フェラーリ初の4ドアモデルだ。いわゆる観音開き式のドア(ウエルカムドア)を採用した理由もまた乗降性のみならず軽量化と剛性の確保に有効だったから。ホイールベースはGTC4ルッソと変わらず。フロントミッドパッケージや4WDステムの構成だけをみれば、進化したルッソの車高を上げてドア数を増やし大径タイヤを履かせたような車である。
ダイナミック性能において最も重要な役割を果たしたのは、まったく新しいアクティブサスペンションシステムだった。これが実用化されたからこそ、車高の高いモデルであっても跳ね馬のエンブレムを付けるにふさわしいモデルになったとマラネッロは強調した。
▲観音開きのドアは乗降性も考慮して大きく開くようになっている世界のメディアを招いての国際試乗会は、北イタリア有数のスキーリゾート、ピンツォーロで開催された。雪景色によく映えるブルーメタリックのプロサングエに乗り込んだ。ローマから採用されたデュアル・コックピット・ダッシュボードは、この車でほぼ完全にそのスタイルを確立させている。ついでにリアも独立2座。前席と見た目にほとんど変わらぬシートを備えており、その乗り心地も想像以上に素晴らしいものだった。
新デザインのステアリングホイールには、赤いレバーダイヤルの“マネッティーノ”(ドライブモード選択)と各種のタッチ操作機能が備わっている。ローマではその操作感が不評だった後者には凹みをつけることで扱いやすくなった。それでも物理的なスイッチには劣るが。
ドライブモードの組み合わせは近年増える一方だ。プロサングエにもエンジンやミッション、サスペンション、シャシーのキャラクターをそれぞれ変えた組み合わせが12種類も設定されていた。ダイヤルとプッシュスイッチを赤いレバー1つにまとめることで、走りながらでも比較的容易に変更できた。
▲SF90ストラダーレからインスピレーションを得たというコックピット。デュアル・コックピット・ダッシュボードが採用されたまずはコンフォート(ドライブモード)&ミディアム(ダンピング)で走り出す。乗り心地はかなりよい。ウインタータイヤ(ミシュラン パイロットアルペン)を履いていることを差し引いてもよかった。低速域からいきなり人車一体となって動くから、ボディサイズをまるで感じさせない。ホテルの狭い取り付け道路でも苦労がなかった。
前方で心地よくうなっていたV12が速度を上げるにつれてドライバーを誘惑する。「早く踏んでみろよ」。街を抜けると空いたワインディングに入った。マネッティーノをスポーツ&ハードに切り替える。
ボディが一層引き締まって一体感が高まったように感じた。前脚はステアリング操作ひとつで自在に思ったところへ置くことができる。同時に後脚は力強い蹴りを確実に路面へと伝え続ける。シャシー制御の素晴らしさも特筆に値した。ところどころアイシーなワインディングロードでも気にせず攻め込んでいけたのだ。
トルクフィールは常に分厚く扱いやすいから、車のサイズをふた回りくらい小さく感じさせる。さらに踏み込めばエンジンフィールは快感レベルに達し、車体全体に力を行き渡らせつつ、8000回転までストレスなく回った。何よりサウンドが素晴らしい!
その走りはもはや視線の高いルッソどころではない。背の高い812というべきだ。
▲低回転域からトルクを発生するよう改良が加えられた6.5L V12エンジンは、最大トルク716N・mの80%を2100rpmから発生させる
▲リサイクルポリエステルを用いたアルカンターラなど、環境に配慮した素材も用いられている
▲独立2座となる後席。リクライニングやシートヒーターなど快適装備も充実
▲ラゲージ容量は473L。ラゲージルームと後席を仕切るボードが備わる
自動車評論家
西川淳
大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。
スーパーSUV、ランボルギーニ ウルスの中古車市場は?

日本では2018年に登場したランボルギーニのハイパフォーマンスSUV。ブランド初のターボエンジン(4L V8ツインターボ)を搭載する。大人5人が乗車可能な広い室内空間と、通常616L(後席を倒せば最大1596L)のラゲージを備えた実用性も高いモデルだ。
2023年3月末時点で中古車市場には70台近くが流通し、平均価格は約3820万円となっている。ボディカラーの選択肢も増えてきた今、ランボルギーニの“スーパーSUV”を中古車で探してみてはいかがだろうか。
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