【試乗】新型 フェラーリ プロサングエ|ドライブフィールはまさしく“跳ね馬”! 実用すらも手に入れたオールマイティな4ドアスポーツ
カテゴリー: フェラーリの試乗レポート
2024/09/12
 ▲伝統のV12自然吸気エンジンをフロントミッドに搭載した、フェラーリが“4ドア4シーターのスポーツカー”と呼ぶラグジュアリーSUV。革新的なサスペンションシステムにより、背の高い4ドアモデルでも他モデルと遜色ないパフォーマンスを実現する
▲伝統のV12自然吸気エンジンをフロントミッドに搭載した、フェラーリが“4ドア4シーターのスポーツカー”と呼ぶラグジュアリーSUV。革新的なサスペンションシステムにより、背の高い4ドアモデルでも他モデルと遜色ないパフォーマンスを実現する乗り心地は“跳ね馬”史上最高クラス
プロサングエがいよいよ日本の道を走り始めた。
フェラーリ初の4ドアモデル、ではあるけれど、マラネッロは決してSUVとは呼ばない。BMWが自社製SUVをSAVとしたような別のカテゴリーを装うふうもない。確かにその車高はランボルギーニ ウルスやアストンマーティン DBXに比べてさらに低く、遠目には妙に大きなタイヤを履いた5ドアハッチバックに見えなくもない。
けれども、日本の道で実物を目の当たりにするとかなりデカい。低いといっても車高は1.59mだから、一般的に言ってSUVの部類だ。
マラネッロがプロサングエのことをSUVとは呼ばない理由。それは何もスタイルの話ではなかった。そのパフォーマンスにこそあった。もっとわかりやすくいえば“ドライブフィール”だ。日本に上陸したプロサングエを1000kmほどドライブしたが、その走りは他のどのSUVとも違った。違ったどころか例えるなら視線が高くてドア数が多いだけの、それは812だった。そう、跳ね馬そのものだったのだ。
なぜそんなことができたのか。簡単にその根源となった中身について振り返っておこう。伝統のV12自然吸気エンジンを完全フロントミッドに搭載、8速DCTをリアアクスルに組み合わせたトランスアクスル方式とし、カナダはマルチマティック社と共同開発した全く新しいアクティブサスペンションシステムを採用した。そんなSUVなどこれまでになかったのだ。
ホイールベース長はGTC4ルッソと変わらない。いわゆる観音開き式のドアを採用した理由も、ホイールベースをむやみに伸ばすことなく、乗降性はもちろん軽量化と剛性の確保に有効だったからで、決して奇をてらったものではなかった。フロントミッドパッケージや4WDシステムの構成を見れば、進化したGTC4ルッソの車高を上げて大径のタイヤを履かせたような車というわけだ。
ダイナミック性能において重要な役割を果たしているのはそのレイアウトともうひとつ、アクティブサスペンションシステムである。電気モーターによって四輪個別に、精緻でかつ瞬時に制御されるこの新たなシステムが実用化されたこと、そのことがマラネッロをして4ドアのSUV風モデルをローンチする決断を下させたのだった。 
 
 ▲四輪個々に備わるモーターを用いてダンパーの油圧を最適化するアクティブサスペンションを装備
▲四輪個々に備わるモーターを用いてダンパーの油圧を最適化するアクティブサスペンションを装備 ▲リアウインドウはワイパーの代わりに、ガラス表面を通過する気流で水滴をきれいにするようにスポイラーが調整されている
▲リアウインドウはワイパーの代わりに、ガラス表面を通過する気流で水滴をきれいにするようにスポイラーが調整されているサマータイヤを履くプロサングエに乗り込むのは今回が初めてだ。ローマから採用されたデュアルコックピットコンセプトがさらに強調されている。リアも独立2座で、シート形状に至っては前席と見た目にほとんど変わらない。ちなみに先走って書くと、その乗り心地もまた前席とほとんど変わらなかったし、包まれる感覚も良かった。
乗り心地は上々、どころか跳ね馬史上最高クラスに良い。一体となって動く感覚も素晴らしく、そうなるとボディサイズさえまるで感じさせない。さらに視線が高いぶんGTC4ルッソより格段にドライブしやすいと思った。
存在感もあらわにV12エンジンが前方で唸っている。その音とわずかな振動がすでに心地よい。雨中のワインディングに差し掛かった。ドライブモードをスポーツ&ハードに切り替えてみる。
 
 ▲最高出力725ps/最大トルク716N・mの6.5L V12エンジンを搭載。低回転域からトルクを発生するよう改良が加えられ、最大トルクの80%を2100rpmから発生させる
▲最高出力725ps/最大トルク716N・mの6.5L V12エンジンを搭載。低回転域からトルクを発生するよう改良が加えられ、最大トルクの80%を2100rpmから発生させるボディが一層引き締まったように感じる。車体との一体感がさらに高まった。前足は両手に直結したかのようで、自在に思ったところへ置くことができる。後足はというと見事な蹴りを確実に路面へと伝え続けるのだが、そのことが腰へと如実に伝わる感覚がたまらない。FRっぽいのだ。
V12エンジンのフィールはこのうえなく上等だ。トルクは低回転域から分厚く、車のサイズをかなり小さく感じさせてくれる。右足をこらえていると高回転域におけるエンジンのフケは快感レベル。車体全体に力を行き渡らせつつ8000回転までストレスなく回った。なるほどその走りは視線の高いGTC4ルッソどころではなかった。ほとんど812レベルなのだ。
高速道路ではリアルスポーツカーから類まれなグランツーリスモへと変身する。着座位置が高いため視線の目標が遠くなり、結果的に車両の直進性に与えるドライバーの影響を最小限に抑えることができるのだ。もちろん、シャシー制御そのものが上出来であることは言うまでもない。
街乗りから、高速クルージング、そしてスポーツドライブまで。過去にこれほどオールマイティな跳ね馬はなかった。しかも4枚ドア。実用という言葉が最も似合わないブランドだが、今やそれすらも手に入れた。彼らに死角はないのだろうか……。
 
 ▲空力が考慮された無駄のないスタイル。デザインはフラヴィオ・マンゾーニが率いるスタリングセンターが手掛けている
▲空力が考慮された無駄のないスタイル。デザインはフラヴィオ・マンゾーニが率いるスタリングセンターが手掛けている ▲SF90ストラダーレからインスピレーションを得たという運転席。助手席もコックピットのようなスタイルとした、デュアルコックピットのコンセプトが採用されている
▲SF90ストラダーレからインスピレーションを得たという運転席。助手席もコックピットのようなスタイルとした、デュアルコックピットのコンセプトが採用されている ▲フロントシートにはマッサージ機能が備わる。室内にはリサイクルポリエステルを用いたアルカンターラなど、環境に配慮した素材も用いられている
▲フロントシートにはマッサージ機能が備わる。室内にはリサイクルポリエステルを用いたアルカンターラなど、環境に配慮した素材も用いられている ▲独立2座の後席はヒーターやリクライニング機能が備わっている
▲独立2座の後席はヒーターやリクライニング機能が備わっている ▲ラゲージ容量は473L。ラゲージルームと後席を仕切るボードが備わる
▲ラゲージ容量は473L。ラゲージルームと後席を仕切るボードが備わる
自動車評論家
西川淳
大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。
フェラーリの4シーターモデル、GTC4ルッソの中古車市場は?

FF(フォー)の後継モデルとなる、2016年に登場した2ドア4シーターのGTクーペ。個性的なシューティングブレークスタイルに6.3L V12エンジンをフロントミッドに搭載、フェラーリが4RM-Sと呼ぶ4WDシステムを装備する。後席は独立2座とされ、ラゲージ容量も450Lが確保されている。2017年には、後輪駆動で3.9LのV8ツインターボを搭載する、よりスポーティな走りのGTC4ルッソTも登場した。
2024年8月下旬時点で、中古車市場には15台程度が流通、支払総額の価格帯は2500万~3500万円。物件の多くはGTC4ルッソTという状況。
 
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