【海外試乗】新型 フェラーリ SF90 XX スパイダー|公道での快適さと安定感は現行フェラーリで一番! サーキット走行を極めた“最強ロードカー”
カテゴリー: フェラーリの試乗レポート
タグ: フェラーリ / オープンカー / ハイブリッド / 4WD / SF90ストラダーレ / SF90スパイダー / EDGEが効いている
2024/08/26
▲プラグインハイブリッドのSF90をベースとし、サーキットでのパフォーマンスを最大限に高めた限定モデル。XXモデルとして初めて公道走行が可能となっているフィオラノ最速ロードカーを公道で試乗
SF90 XXはフェラーリ史上、最強・最速のロードカーだ。
その事実は、V8ツインターボエンジンとプラグインハイブリッドシステムを組み合わせたパワートレインの最高出力が1030psに達している他、2023年11月にフィオラノ・サーキットで1分17秒309のラップタイムを記録したことで端的に証明できる。
これは、SF90 XXのベースとなったSF90の、しかもサーキット・パフォーマンスを向上させるアセットフィオラノと呼ばれるパッケージオプションを装着したモデルを1.4秒もしのぐ記録。そしてV12エンジンにハイブリッドを組み合わせたミッドシップスーパースポーツのラ・フェラーリがマークしたタイムさえ2秒以上も上回っている。いずれにせよ、これまでフェラーリが生産したロードカーの中で、SF90 XXよりもフィオラノサーキットを速く走れるモデルが他にないことだけは間違いない。
筆者はこのSF90 XXのクーペ版である“ストラダーレ”にフィオラノで試乗し、バツグンのコントロール性とスタビリティを有していることを確認している。それは、走り始めがチョイ濡れという最悪のコンディションのもとで行われたが、4本のタイヤがしっかりと路面を捉えている様子がステアリングやシートから伝わってきて強い安心感が得られるうえ、タイヤが滑り出す直前のインフォメーションを早めに発してくれるので、ほとんど不安を覚えることなく限界的なコーナリングに挑戦することができた。ラップタイムはともかく、あれほど安心してフィオラノを攻めることができたのは、筆者にとって初めての経験だった。
一方で、これだけ傑出したスーパースポーツカーを一般道で走らせることへの不安がなかったといえばウソになる。なにしろ、ベースモデルとなったSF90のアセットフィオラノ装着モデルを日本の公道で走らせたときには、乗り心地に関してそれなりのガマンを強いられたことも事実。私は期待と不安に胸を膨らませながら、SF90 XX スパイダーのステアリングを握った。
▲4L V8ツインターボエンジンにモーター3基を組み合わせたハイブリッドシステムを採用。2基のモーターはフロントアクスルに左右独立して装着、1基はエンジンとギアボックスの間に設置されている試乗したのはフランスの高速道路と一般道。公道での快適性を確認するという意味では、申し分のない内容である。
走り出してすぐに印象に残ったのは、足回りがきわめてしなやかに感じられることだった。低速域でゴツゴツとした振動が伝わってくることもなければ、波打つような路面で足回りが共振を起こして激しく上下に揺さぶられるようなこともない。多少の凹凸があろうともその衝撃をすっと吸収し、ボディをフラットに保ってくれる、そんな乗り心地だったのだ。
そして高速道路に足を踏み入れれば、その印象はさらによくなる。速度を上げれば上げるほどフラット感は強まり、まるで波ひとつない湖面を滑らかに進むヨットのように、スムーズな走りを見せてくれるのだ。乗り心地の快適性でいえば、フェラーリの現行ラインナップの中でトップに位置する296GTB/GTSさえ確実に凌ぐほど。とりわけ、細かく震えるような振動の遮断に関していえば、SF90XXの方が1枚も2枚も上手で、圧倒的なクオリティ感を味わうことができる。
高速直進性も見事だった。これも路面のわだちなどに進路を乱されることなく、ステアリングに軽く手を添えているだけで一直線に走ってくれる。これは、サーキット走行を重視したスーパースポーツカーでは極めて珍しいことといっていい。この辺は、フェラーリのロードカーとしては珍しい、独立式リアウイングを設けてまで強化したダウンフォースの威力とみてまず間違いない。
本来であれば相反するはずの、サーキットでのパフォーマンスと公道での快適性をこれほど高い次元で両立させたSF90 XXは、最近のフェラーリのエンジニアリング力の高さを示すモデルだ。価格はSF90のおよそ倍だが、それだけの価値をSF90 XXは確実に有している。
残念なのは、ストラダーレ(クーペ):799台、スパイダー:599台の限定生産枠が、例によってすべて完売していること。まあ、どちらにしても私には到底、手が届かないけれど、フェラーリがなんとも罪作りなブランドであることだけは相変わらずといえる。
▲多数の空力装備により250km/hで530kgのダウンフォースを発生させる
▲エアインテークのスクープなど細部までの改良により、空力や冷却効率などが大幅に高められた
▲固定式のリアウイングを装備。ウイング下には可動フラップによりダウンフォースを可変させるシャットオフガーニーが備わる
▲素材にはカーボンや高機能ファブリックを採用するなど、室内もシンプルな形状や素材により軽量化が図られている
▲カーボン製のリトラクタブル・ハードトップを採用、車速45km/hまでなら14秒で開閉可能ベースモデルとなるフェラーリ SF90の中古車市場は?

2019年に発表されたプラグインハイブリッドのスーパースポーツ。最高出力780psの4L V8ツインターボと3基のモーターが組み合わせられ、システム合計出力1000psを発揮する。最大25kmのEV走行も可能。さらにスポーティな走りを実現させるアセットフィオラノもオプションとして用意される。
2024年8月中旬時点で、中古車市場には30台程度が流通、支払総額の価格帯は5250万~8000万円。そのうち20台ほどがアセットフィオラノとなる。一方、スパイダーは10台程度が流通、支払総額の価格帯は6300万~7900万円。こちらは半数程度がアセットフィオラノとなっている。
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