【試乗】新型 フェラーリ ローマスパイダー|クーペの高性能っぷりは踏襲! さらに操る感覚に磨きをかけたオープンスポーツ!!
カテゴリー: フェラーリの試乗レポート
2023/10/23
▲“タイムレスなエレガントさ”を体現したクーペモデルの世界観を踏襲する4シーターオープン。クローズド時でもクーペモデルの美しいフォルムを崩さないソフトトップが採用されているクーペより格段に乗り心地がよくなっている!?
ベルリネッタ(クーペ)の発表から3年。2023年3月にローマのオープンモデル、スパイダーがデビューした。マラネッロ製のFRオープンとしては実に54年ぶり、デイトナスパイダー(365GTS/4)以来となるソフトトップのオープンモデルである。
ソフトトップとはいえ、クローズド時のスタイリングはクーペの雰囲気をよく保っている。優雅さという点でまるで変わらない。ボディとトップの色や素材が違うことで、ただでさえエレガントなローマの佇まいがより強調された。
ソフトトップは電動開閉式。5層構造で吸音効果の高い素材を挟み込む。最新のソフトトップ式オープンモデル(最近になってリトラクタブルハードトップより増えてきた)と同様に、ローマ スパイダーのトップもまた“硬い”。骨組みは軽量なZ構造タイプ。リアスクリーンとともに格納スペースへときっちり収まる。開閉に要する時間は13.5秒で、センターコンソールに設けられた開閉スイッチを長押しする。ソフトトップでありながら時速60km/hまでなら走行中の開閉も可能だ。
素材にもこだわりがある。特にブラック以外のカラートップ(レッド、マロン、グレー、ネイビー)では生地がカーボンファイバーのような格子状に織り込まれ独特の光沢と立体感を生んでいる。
デュアル・コックピットスタイルのインテリアは基本的にクーペと同じ。リアシートに目を向けると、穴の空いた大きな板がシートバックと一体になっている。ウインドウディフレクターは、センターコンソールにあるスイッチでダンパーロックを解除すればゆっくりと跳ね上がる仕組み。時速170km/h以下の速度域ならば走行中でも展開できるが、事前に開いておけば(試してはいないけれど)時速170km/h以上でも使用できるという。収納は手で押して元の位置へ。トノカバーはトップ生地と同じ素材で覆われており、リアヘッドレストと一体化されているから、オープン時のスタイルもきれいにまとまっている。
オープン化による重量増は84kgだ。サイドシルやAピラーの構造がクーペとは異なっている。サスペンションの制御をはじめ動的なキャリブレーションもまたスパイダー専用。その他、進化した装備としてはADASにレーンキープアシストと緊急ブレーキが備わった。ついに跳ね馬のスポーツカーにも、だ。このADASは今後クーペにも装備される。
生産は2023年末に左ハンドル市場用から始まる。クーペとスパイダーの2本立てとなったことで、名実ともにローマはポルトフィーノMの後継モデルとなった。ちなみにポルトフィーノMは既受注分で生産終了だ。
▲クーペをベースとしつつ、リアセクションにはポルトフィーノMのコンポーネント、サイドシルは専用設計とするなどスパイダー独自の設計が施されている
▲13.5秒で開閉可能なソフトトップは、オープン時のスタイルを考慮してリアスクリーン一体型とされたパワートレインもクーペと全く同じ。最高出力620ps/最大トルク760N・mの3.9L V8ツインターボエンジンに8速DCTを組み合わせて搭載する。メーカー公表の加速スペックも、0→100km/hでクーペと変わらず3.4秒、重量差が多少利いてくるはずの0→200km/hでも0.4秒落ちの9.7秒だから、クーペと変わらない加速性能をキープしたと言っていい。
実際、オープン状態で乗ってみれば、風を直に受ける分、クーペと同等またはそれ以上の速さを感じる。抑制が利いているけれど車好きにはたまらないエグゾーストサウンドのシャワーを直接浴びることもまた、より速いと感じさせるポイントだろう。
前述したウインドウディフレクターはことのほか有効だった。サイドウインドウも立てたなら、けっこうな速度域まで風を巻き込まない。頭上を風がなでる程度で心地よい。
▲オープン時には後席ヘッドレストからリアスポイラーまで流れるようなデザインとなる
▲インテリアのデザインはクーペと同様。運転席と助手席を別々な空間としたデュアル・コックピット・コンセプトを採用するなによりクーペより確実に乗り心地のよくなったことが印象的だった。前輪のつっぱり感が薄れ、ハンドルを握る両手と前輪との一体感にしなやかさが増している。
ワインディングロードを走らせると、そのことがいっそう顕著に感じられた。ハンドルの操作と正確に連動する前アシの動きはクーペでも大きな魅力のひとつだったけれども、しなやかさと精緻さがさらに増している。前アシのリアクションは極めて自然でスムーズ、正確なだけでなく気持ちいいと思えるレベルに達した。ブレーキのフィールも確実さが増し、減速すら大いに楽しめる。
速度域に関わらずハンドルを切っているだけで興奮するスポーツカーなんて今どき珍しい。頑張って攻めこまずともそう思えるのだから、たいしたもの。このあたり、来るべき電動化時代のドライビングファンをも見据えているのではないだろうか。
絶対的な高性能だけがスポーツカーの楽しさでないことをローマ スパイダーは教えてくれる。風と跳ね馬の息遣いを感じながらマシンを自在に操る感覚だけを楽しむのだ。誰かと何かを競うのではない。機械との対話を自分のレベルでじっくりとたしなみつつ走る。走らせ方にもオーナーのセンスが表れる。
世界で今、最もドライビング・スイートなスポーツカーであった。
▲シャークノーズと呼ばれるフロントデザインもクーペと同様
▲最高出力620ps/最大トルク760N・mを発揮する3.9L V8ツインターボエンジンをフロントに搭載
▲室内への風の巻き込みは少なく、頭部周辺の乱流は以前の2+2スパイダーモデルより約30%も改善されている
▲リアシート背もたれの切れ目が入っている部分が跳ね上がることでウインドウディフレクターの役目を果たす
▲ソフトトップはコンパクトなZ字型に収納。なお、クローズド時のラゲージ容量は255Lとなる
自動車評論家
西川淳
大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。
先代モデルとなるフェラーリ ポルトフィーノMの中古車市場は?

2020年にポルトフィーノの進化版として登場したFRの4シーターオープン。“クーペとオープンが1台で楽しめる”リトラクタブルハードトップを採用、開閉時間は14秒となる。エンジンは最高出力620ps/最大トルク760N・mの 3.9L V8ツインターボを搭載する。
2023年10月中旬時点で、中古車市場には10台程度が流通。発売から3年ほどしか経っていないこともあり、価格帯は3490万~4000万円とばらつきが少ない。個体の品質差も少ないので、ボディカラーやオプション装備などで比較・検討してみるのがいいだろう。
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