【試乗】新型 マクラーレン アルトゥーラ|バッテリーの影響を感じさせないリアルスポーツカー!!
カテゴリー: マクラーレンの試乗レポート
2023/05/13
▲マクラーレンの量産プラグインハイブリッドスーパースポーツ。カーボンと成形アルミニウムを用いたMCLA(マクラーレン・カーボン・ライトウェイト・アーキテクチャー)と呼ばれる超軽量シャシーに、新開発3L V6ツインターボとモーターを組み合わせ搭載する 周囲を気遣う“無音”は新しいスーパーカーの嗜み
マクラーレンの量産プラグインハイブリッドシリーズがついに日本の公道を走り始める。遅れていたカスタマーへの納車もそろそろ始まるようだ。
最大の特徴はもちろん電気モーターとバッテリーを積んで電動走行を可能としたことだ。585psを発する新開発の120度3L V6ツインターボエンジンと8速DCTとの間に95psの電気モーターをはさみ込んだ。7.4kWhのリチウムイオンバッテリーはマクラーレンお得意のカーボンファイバーボディにビルトインされている。これくらいのバッテリーを積むとなれば重量増が気になるところだが、アルトゥーラの車両重量は1.5t弱(DIN車両重量1498kg)というからライバルよりもかなり軽い。しかも、システム最高出力は680ps、最大トルクも720N・mあるから、パワーウェイトレシオ的には十分な戦闘力を確保する。
0→100km/h加速は3秒。ひとクラス上のパフォーマンスだと言っていい。これまでのスポーツシリーズ(540や570)を圧倒する動力性能を発揮しながらも、EV航続距離は最大31kmというから静かな住宅地にガレージを持つオーナーにはありがたい。ちなみに、リバースギアはなくバックは電気モーターの逆回転で賄う。
▲従来のマクラーレンモデル同様にディヘドラルドアを採用。オープン時の横幅がわずかに狭くなっている
▲リアミッドには最高出力585ps/最大トルク585N・mを発生する3L V6ツインターボを搭載。パワーウェイトレシオは488ps/tとなる(乾燥重量1395kgで換算)エクステリアには初期の12Cを思い出させるシンプルさとダイナミックさが戻ってきた。派手な空力デバイスに頼ることなくまとめられ、中でもルーフラインやリアフェンダーまわりの造形が“世界一のレーシングカーマニュファクチャー”であるマクラーレンらしい。
インテリアデザインもシンプルで機能性重視だ。例によってドライブモード選択はパワートレインとハンドリングの2系統に分けられているが、その選択はメーターナセルに取り付けられたスイッチで行う(R32スカイラインGT-Rを思い出した! )。ステアリングホイールから手を放さすことなく各種の操作ができるというわけだ。
前述したパワートレインのみならず、カーボンファイバーボディシェルやサスペンションシステムも全面的に刷新されており、さらには電子デファレンシャルなど新たな装備も数多く追加される。高級車には不可欠のインフォテイメントシステムやADAS(運転支援システム)も著しく進化した。その実力をサーキット、ワインディングロード、そして市街路から高速道路まですべての領域で試してみることに。
▲センターコンソールには8インチのタッチスクリーンを装備。メーターフードには走行モードのセレクトスイッチが配されるまずはサーキット。バッテリーによる大幅な重量増はマイナス2気筒分とさらなるボディダイエットによってできる限り相殺されている。パワーウェイトレシオを見ても高性能の予感はあった。実際、その走りはプロレベルで攻め込まない限り、バッテリーの影響をほとんど感じさせない。重量バランスの良さと空力が利いていて、前輪を思いどおりの場所に置きながら進む感覚はいかにもリアルスポーツカーらしい。正確なハンドリング性というマクラーレンの持ち味を殺すことなくハイブリッド化に成功したとまずは言っていいだろう。ただし、トラックモードで走る限り電気は“使ってはためる”の繰り返しで、エンジンによる充電が間に合わないときには“かったるさ”などの悪影響が出るかもしれない。
サーキットでマクラーレンらしく走るということは、ワインディングロードでは間違いなく気持ちの良いハンドリングマシンである。スポーツモードで走ればよりクイックなステア感覚とリア駆動の程良いドキドキ感がミックスされ、ハイパワーMR(ミッドシップ・リア駆動)らしいドライブを楽しむことができた。コーナリングスピードは異次元で、どこまでも車を信じてハンドル操作をすればいい。ブレーキのフィールにも違和感はなかった。
話は前後するが、サーキットへ出かけるような日はゴルフと同じく休日で、たいてい早朝だ。そんな日にメルセデス・ベンツやBMWの最新EVならともかく、ディーゼルエンジン車でも始動の騒音には気を使う。ましてや、スーパーカーの大きなエンジンサウンドなんて言語道断。地下からマンションを揺るがす音と振動に何度、奥方から叱られたことか……。
アルトゥーラならそんな心配はない。高速道路に入るまで電動だ。空力がいいからだろう。無音で風を切りつつ前進する感覚もまた気持ち良い。これぞ新しいスーパーカーの嗜みというものだろう。ソリッドな乗り心地も多少の上下動が気になるがドライバー的には許せる範囲内。
高速道路ではフラットライドに徹する。視界が良く、ドライバーの視線は安定する。途中で雨にも見舞われたが安定感はまるで崩れない。アルトゥーラはよくできたGTでもあった。
▲排圧を低減させるツインハイマウントエグゾーストシステムを装備
▲ステアリングの位置調整に合わせてメーター部も上下に可動する。先進運転支援システムを採用、OTAによるアップデートにも対応した
▲軽量な一体型シートであるクラブスポーツシートを採用
▲ボンネット下には容量150Lのラゲージが備わっており、充電用ケーブルが積まれていた
自動車評論家
西川淳
大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。
ライバルとなるフェラーリ 296GTBの中古車市場は?

アルトゥーラと同じV6ターボエンジン+モーターのMRという構造を有するライバルといえば、2021年6月に発表されたフェラーリのプラグインハイブリッドスポーツ、296GTBだろう。120度のバンク角をもつ最高出力663ps/最大トルク740N・mを発生する2.9L V6ターボエンジンに、167psのモーターを組み合わせシステム総合出力を830psとした。約25kmのEV走行も可能だ。
2023年5月前半時点の中古車市場にはわずか1台。ただ、登場から2年が経過したこれから中古車の選択肢が増えてくるかもしれない。定期的に中古車もチェックしてみてはいかがだろうか。
▼検索条件
フェラーリ 296GTB× 全国【関連リンク】
あわせて読みたい
“日本の誇り” 日産 R35 GT-Rは果たしてスーパーカーなのか?【スーパーカーにまつわる不思議を考える】
’07 フェラーリ F430|空力とヘリテージが息づくV8ミッドシップ【名車への道】
光岡 M55とダッジ チャレンジャーは本当に似てるのか問題。アメ車好きにも刺さるのか、ガチ比較してみた!
’73 シトロエン DS|独自のデザインと乗り心地、そのすべてに“哲学”がある【名車への道】
フェラーリの維持費ってどれくらいかかるの? そんなリアルな疑問、専門店に聞いてきた!
~300万では選べない、1000万では高すぎる~ 600万円で探せる一度は乗っておくべきクルマ【カーセンサーEDGE 2025年11月号】
マセラティ MC12ストラダーレ最高額落札の盛り上がりの陰で、マクラーレンの“最終車両”コレクションがひっそりと販売されていた!?
FD3S型RX-7の価格高騰が止まらない……悔しいから少しでも賢く狙う方法を真剣に考えてみた!
【祝! 頭文字D30周年】 主人公・藤原拓海の愛機ハチロクことスプリンター トレノAE86の中古車状況は今どうなってる? モデル概要、狙い方も併せて解説
エントリーモデルとして成功を収めたフェラーリの“V8フロントエンジン”の系譜とは【スーパーカーにまつわる不思議を考える】









