【試乗】新型 BMWアルピナ B4グランクーペ/D4Sグランクーペ|どちらもまるで滑空しているかのような素晴らしき心地よさ!
カテゴリー: BMWアルピナの試乗レポート
2023/03/22
▲BMW 4シリーズ グランクーペをベースに、アルピナが速く、快適で、ラグジュアリーに仕立てたハイパフォーマンスモデル。サーキット志向のBMW Mとはまた違う魅力が味わえるガソリンのB4とディーゼルのD4S、どちらを選ぶべきか?
BMWがそれまでの3シリーズクーペを、4シリーズと名称を変えてきたのは2016年のこと。クーペモデルを偶数で呼ぶこと自体は、6シリーズや8シリーズの伝統に沿うものだけれど、例えば以前の3シリーズクーペと8シリーズとでは2ドアの意味合いがまるで異なっていた。3シリーズクーペはどちらかというと3シリーズの2ドアサルーン的で、スタイルも性能もセダンに近いものだった。けれども8は、形もパフォーマンスも5や7とはまるで違う。要するに4シリーズは3シリーズクーペの単なる名称変更ではないというわけだ。そのスタイルにはもはや3の面影は薄く、ほとんどミニ8シリーズである。
そう考えると3シリーズベースのアルピナ B3・D3Sと4シリーズベースの同B4・D4Sの仕上がりも互いに違っていることは容易に想像がつくだろう。たとえ4ドア同士、つまりリムジンとグランクーペの比較であっても、だ。ちなみに、4シリーズベースのアルピナはグランクーペのみ。2ドアやカブリオレを用意する本家Mとの差別化(遠慮?)であろう。本家MがM4グランクーペをもたないこともまた然り。
▲ピンストライプなどアルピナ伝統のデザインを採用。エアロパーツはアルピナらしい控え目な仕立てとなる
▲アルピナ・スポーツ・エグゾースト・システムはオーバル形状の4本出しテールパイプが特徴4シリーズベースのアルピナは、マイナーチェンジ前の3シリーズベースアルピナに比べてよりアスリート的だった。
特にガソリンエンジンのB4グランクーペは、ベースモデルの特徴をより増幅したようで、御して乗るというスポーツカーテイストが前面に押し出されている。同じガソリンエンジンを積んだマイチェン前B3の、あのミニロールス的なドライブ感を少なくとも街中ではまったく感じない。
動き出すとガッチリとしたフロントアクスルの存在に驚いた。前アシに専用チューニングを加えた結果だろう、前輪の存在感がすごい。ライドコンフォートも硬めで、ビシッビシッとショックを受け取る。ただ、すぐに収めてくれるからつらくはない。B8グランクーペに似た感覚だ。
M謹製のS58エンジンも相変わらず素晴らしい。鋭く回るけれど扱いづらさはなく、力の出方も御しやすい。ハンドリングにしろ高速走行にしろ、あくまでもドライバーを中心にパフォーマンスさせるという、それはアルピナの哲学だ。
▲直6ディーゼルエンジンを搭載するD4Sグランクーペ。B4グランクーペと外観上の違いはほとんどない対してディーゼルユニットを積んだD4Sグランクーペの方はどうだったか。これが想像を超えてよかった。街乗りのコンフォートさではB4を上回っている。前輪の存在感もそこまで強くない。フロントパートの重さをそれほど感じさせない。B4よりしなやかに動く。どちらかというと大好きなマイチェン前のB3に近い。ここが面白いところなのだけれど、なんならD3Sよりバランスがいいと思った。
そしてディーゼルエンジンもすごかった。DセグメントのBMW製6気筒ディーゼルは、日本ではアルピナでしか味わえない。その吹け上がりフィールはそうと知らなければディーゼルエンジンとは思えないほど滑らかでサウンドも心地よい。街中中心のドライブではD4Sに軍配を上げたくなった。
▲ブルーとグリーンの差し色がさりげなく入ったラグジュアリーなインテリア両モデルとも速度を上げていくにつれ、その乗り味がどんどん“まろやか”になっていく。とろけるようなドライブフィールである。アスリートの筋肉は軽い運動をこなすうちに柔らかくなっていくものだ。そのまま高速道路へ。まったくもってよくできたグランドツーリングカーであったことは言うまでもない。
モダンアルピナ最大の特徴は、クルージング時の転がり方にこそある。まるで滑空しているかのような心地よさ。100km/hを超えて初めて前輪の強い存在感からも解放され、意のままながらしなやかにかつ節度をもって動くという絶妙なステアリングフィールだけが残される。最高のグランドツーリングカーである。
こうなってくるとB4かD4Sか、そのチョイスは随分と悩ましい。Sエンジンのもつウルトラシルキーさとスポーツカーライクな街乗りフィールでB4を選ぶか、街中での心地よさとディーゼルの力強さ、そして優秀な高速燃費でD4Sを選ぶか。どちらもグランドツーリングカーとしてはセグメント最強レベルにある。否、もはやノーマルの8シリーズとさえ肩を並べる存在感がある。
さて、もし自分で買うとしたらどちらを選ぶだろうか。マイチェン後のB3やD3Sを試してから、とは思うものの、現段階では……。世界最高のディーゼルエンジンフィールをもち、B3に近いライド感覚のあったD4Sグランクーペに個人的には軍配を上げたい。
▲新デザインとなるアルピナ伝統の20スポーク・デザインのホイールを装着
▲B3と同じ、最高出力494ps/最大トルク730N・mの3L 直6ツインターボ(ビ・ターボ)を搭載
▲シフトまわりにアルピナ・プロダクション・プレートが装着されている
▲レザーシートにはアルピナのエンブレムが備わる。インテリアはオーダーメイドによるカスタムも可能
自動車評論家
西川淳
大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。
BMWアルピナ B3(現行型)の中古車市場は?

BMW 3シリーズをベースとしたアルピナのハイパフォーマンスセダン。エンジンはB4グランクーペと同型のS58を搭載する。
2023年3月前半時点、中古車市場には5台程度しか流通していないという希少車だ。中古車平均価格は1372万円と新車時価格からほとんど相場下落はしていない。アルピナはクオリティにこだわり続け、年間1700台程度の生産台数を維持しているため、納期が長くなったり、モデルによっては手に入らないことも。そんな希少性の高いアルピナは、中古車でも「見つけた者勝ち」「早い者勝ち」なのである。
▼検索条件
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