【試乗】新型 日産 GT-R プレミアムエディション T-spec|16年の時を経て本物の“GT”へ昇華した、魂のモデル
2023/11/13
 ▲2023年4月に発売された日産 GT-Rの2024年モデル。その中から今回は「プレミアムエディション T-spec」について、自動車テクノロジーライターの松本英雄氏によるインプレッションをお届けする
▲2023年4月に発売された日産 GT-Rの2024年モデル。その中から今回は「プレミアムエディション T-spec」について、自動車テクノロジーライターの松本英雄氏によるインプレッションをお届けするGT-Rは登場から16年経過しても進化し続けている
2007年の登場からすでに16年が経過した日産 GT-R。
デビュー当時から今に至るまで大きなデザインの変更はなかったが、常に性能向上し続けることを使命として生産され続けてきた。
初めて試乗したときは、大人のグランツーリズモ(GT)感を漂わせた雰囲気を醸し出してはいるが、ガッツリとしたスポーティさが強すぎるという印象を抱いていた。
サスペンションは超高速域を意識したせいでしなやかさに欠け、後席から聞こえるトランスミッションの高周波音も気になり、決して長距離を快適に過ごす「GT」とは言えなかった。
GT-Rは究極のスポーツモデルなのだから、スポーティすぎて何が悪いのか? と思う人もいるだろう。だが、極限のテクニックを楽しむのはごく一部の人に限られるのだ。
 
 ▲デビュー時の日産 GT-R
▲デビュー時の日産 GT-Rしかし、2度目のマイナーチェンジモデルとなる2017モデルでは一気に成熟した。
乗り込んだときのボディの沈み込みと走り出しの静粛性から、ロングディスタンスが可能な「GT」へ進化したことがうかがえたのだ。
安全性の高いハンドリングと制動力はGTモデルとして十分なものを備えたが、一方でロードノイズや乗り心地は依然気になる仕上がりだった。
 
 ▲2度目のマイナーチェンジを受けた2017モデル
▲2度目のマイナーチェンジを受けた2017モデルそして、昨年には2022年モデルの「プレミアムエディション T-spec」が登場。これは驚くほど進化したGTモデルで、程よく引き締まったサスペンションは乗り心地もよく、しかも加速の淀みもない。実にスムーズなGT-Rへと変貌した。
特にミレニアムジェイドという専用色は落ち着いていていい。イエローのブレーキキャリパーとの組み合わせも、国産モデルとして色合いにセンスの良さが際立った。
初代からGT-Rには触手が及ばなかったのだが、これは初めて購入を考えさせられたGT-Rであった。しかし、プレミアム価格になっており……とてもじゃないが手が届くモデルではなくなっていた。
 
ハードなスポーツカーは“大人のGT”へと進化
 ▲今回試乗したGT-R プレミアムエディション T-specの2024モデル
▲今回試乗したGT-R プレミアムエディション T-specの2024モデル ▲走行時の不要なノイズや振動が低減された新構造マフラーを採用
▲走行時の不要なノイズや振動が低減された新構造マフラーを採用そうこうしているうちに、今回試乗する機会を得た「プレミアムエディション T-spec」の2024年モデルが登場。
今となっては決してクオリティは高くはないが、ミレニアムジェイドカラーに合わせたダークグリーン系のインテリアのコーディネイトは渋くて好みだ。
 
 ▲ダークグリーンの内装はT-spec専用のものとなる
▲ダークグリーンの内装はT-spec専用のものとなる一方で、最近のモデルだということを考えると、このプラットフォームももう限界なのかと感じる。フロアが高いため、シートを低く構えることが難しいのである。
シート自体は腰の納まりも良好なのだが、ポジションが高いのはいけ好かないだろう。
また、発売当時はインテリアの質感やステッチの雰囲気は国産車では群を抜いて良かったが、「騏驎も老いては駑馬に劣る」。そんな雰囲気もちらほら感じられる。
 

エンジンを始動すると精密に組み上げたエンジンらしく、ハーモニックな音色を奏でる。質の高い燃焼が乗り手に高揚感を与えるのである。
以前はカラカラする音などを感じたが、動力伝達系の精度の高さも気を使ったのだろう。走り出す前から高性能なGTの証しを感じ取れ、自然と顔がほころぶ。
 
 ▲最高出力570ps、最大トルク65.0kgf・mを誇るVR38DETTユニット
▲最高出力570ps、最大トルク65.0kgf・mを誇るVR38DETTユニットDレンジに入れてサイドブレーキをリリースし発進だ。現在において「サイドブレーキ」がある高性能プレミアムモデルは皆無ではなかろうか。なんだか儀式のようで心も落ち着かせてくれる。スタティックでも、これぞ大人のGTにふさわしい。
アクセルとエンジンのコンビネーションは、トランスミッションにじっくり動力をためる感じだが、高級感があって良い。
アクセルを踏み込み加速を味わう。アクセルの踏み加減で燃焼の圧力上昇に変化があり出力特性も変わるが、いたってジェントルなトルク特性だ。
サスペンションはしなやかで、街乗りでも奥深さを十分に感じることができる。
ステアリングフィールは少し前のスポーツカーのようであるが、コラム剛性が高くここだけで超高性能を感じ取れる人もいるはずだ。
路面のアンジュレーションを感じながら、成熟のすばらしさを感じ取る。中高速コーナーでは最小舵角でトレースし、レールの上を走っているようにスムーズだ。意のままにトレースできることは、ドライバーとしてこれ以上の喜びはない。

あまり路面の状態が良くない高速道路を走る。ハイパフォーマンスのランフラットタイヤは剛性が高いが、サスペンションのセッティングとアライメントの最適化でステアリングに影響を及ぼしにくい。これはプレミアムGTにはとても必要なセッティングだ。
ジャンクションに差し掛かり上り坂を軽く踏み込んで合流する。上品な加速にも対応したフレキシブルなトルクフィールだ。いきむことはない。パワーは十分すぎるのだから。
電光石火のシフトアップもスムーズで高揚感を高める。常用速度域でのシフトダウンはいささか苦手な部分もあるが、愛嬌としたい。
今回の試乗では高速の120km/h区間まで足を延ばし、常用領域の高速スタビリティも試した。
80km/hを超えたあたりからシャシー剛性も向上する。それと同時に乗り味にも変化が生じ、スタビリティが一層増すのだ。
GT-R プレミアムエディション T-specの本領は、トンネルに入るときと出るときに感じられた。空気の影響を受けにくいため、しっかりと路面に吸い付きながら走り続ける。ステアリングを握っているドライバーなら、そのすごさが瞬時に理解できよう。
そして、この領域ならば不必要なピッチングもない。すなわち身体も疲れにくいのだ。
16年経過して最高潮を迎えたGT-R プレミアムエディションT-specは、最後の一幕を演じようとしている。
そして16年という年月が「誠の華を咲かせた」ということが理解できる。日産が魂を込めたモデル、それがGT-R プレミアムエディションT-specなのだ。
 

▼検索条件
日産 GT-R(R35・現行型)× プレミアムエディション T-spec×全国 ※流通状況により物件が表示されない可能性があります【試乗車 諸元・スペック表】
●3.8 プレミアムエディション T-spec 4WD
| 型式 | 4BA-R35 | 最小回転半径 | 5.7m | 
|---|---|---|---|
| 駆動方式 | 4WD | 全長×全幅×全高 | 4.71m×1.9m×1.37m | 
| ドア数 | 2 | ホイールベース | 2.78m | 
| ミッション | 6AT | 前トレッド/後トレッド | 1.6m/1.6m | 
| AI-SHIFT | - | 室内(全長×全幅×全高) | 1.73m×1.48m×1.1m | 
| 4WS | - | 車両重量 | 1760kg | 
| シート列数 | 2 | 最大積載量 | -kg | 
| 乗車定員 | 4名 | 車両総重量 | 1980kg | 
| ミッション位置 | フロア | 最低地上高 | 0.11m | 
| マニュアルモード | ◯ | ||
| 標準色 | ダークメタルグレーメタリック | ||
| オプション色 | アルティメイトメタルシルバー4コートM、メテオフレークブラックP 2コートパール、ブリリアントホワイトパール3コートパール、ミレニアムジェイドメタリック、ミッドナイトパープルマルチフレックスM | ||
| 掲載コメント | - | ||
| 型式 | 4BA-R35 | 
|---|---|
| 駆動方式 | 4WD | 
| ドア数 | 2 | 
| ミッション | 6AT | 
| AI-SHIFT | - | 
| 4WS | - | 
| 標準色 | ダークメタルグレーメタリック | 
| オプション色 | アルティメイトメタルシルバー4コートM、メテオフレークブラックP 2コートパール、ブリリアントホワイトパール3コートパール、ミレニアムジェイドメタリック、ミッドナイトパープルマルチフレックスM | 
| シート列数 | 2 | 
| 乗車定員 | 4名 | 
| ミッション 位置 | フロア | 
| マニュアル モード | ◯ | 
| 最小回転半径 | 5.7m | 
| 全長×全幅× 全高 | 4.71m×1.9m×1.37m | 
| ホイール ベース | 2.78m | 
| 前トレッド/ 後トレッド | 1.6m/1.6m | 
| 室内(全長×全幅×全高) | 1.73m×1.48m×1.1m | 
| 車両重量 | 1760kg | 
| 最大積載量 | -kg | 
| 車両総重量 | 1980kg | 
| 最低地上高 | 0.11m | 
| 掲載用コメント | - | 
| エンジン型式 | VR38DETT | 環境対策エンジン | H30年基準 ☆☆☆ | 
|---|---|---|---|
| 種類 | V型6気筒DOHC | 使用燃料 | ハイオク | 
| 過給器 | ターボ | 燃料タンク容量 | 74リットル | 
| 可変気筒装置 | - | 燃費(10.15モード) | -km/L | 
| 総排気量 | 3799cc | 燃費(WLTCモード) | 7.8km/L └市街地:5.2km/L └郊外:8.4km/L └高速:9.3km/L | 
| 燃費基準達成 | - | ||
| 最高出力 | 570ps | 最大トルク/回転数 n・m(kg・m)/rpm | 637(65)/5800 | 
| エンジン型式 | VR38DETT | 
|---|---|
| 種類 | V型6気筒DOHC | 
| 過給器 | ターボ | 
| 可変気筒装置 | - | 
| 総排気量 | 3799cc | 
| 最高出力 | 570ps | 
| 最大トルク/ 回転数n・m(kg・m)/rpm | 637(65)/5800 | 
| 環境対策エンジン | H30年基準 ☆☆☆ | 
| 使用燃料 | ハイオク | 
| 燃料タンク容量 | 74リットル | 
| 燃費(10.15モード) | -km/L | 
| 燃費(WLTCモード) | 7.8km/L └市街地:5.2km/L └郊外: 8.4km/L └高速: 9.3km/L | 
| 燃費基準達成 | - | 

自動車テクノロジーライター
松本英雄
自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。
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