攻めるトヨタの新ブランド 「GR」。86からヴォクシーまで5モデルを一挙乗り
2017/10/29
▲試乗会が実施された袖ヶ浦フォレストレースウェイに、GRブランドのラインナップモデルがずらりと並んだ。スポーツクーペはもちろん、ハッチバックやミニバンとキャラクターも豊富だG’sからGRへ
トヨタは既存モデルをベースにした特別仕様の「G SPORTS」(通称G’s)シリーズを展開していたが、今後は「GR」という新ブランドで展開していくことになった。GRブランドは、最も裾野の広い“GR PARTS”から“GR SPORT”、“GR”、トップモデルの“GRMN”とピラミッド式に整理される。
“GR PARTS”は、アフターパーツでカスタマイズを楽しむエントリーユーザー向け。“GR SPORT”は、メーカーがベース車両にチューニングを施した仕様となり、GRブランドのメインとなる階層であろう。“GR”は“GR SPORT”よりもチューニング範囲を広げた量販スポーツモデル。ピラミッドの頂点となる“GRMN”は、エンジン内部にまでチューニングを加えた数量限定発売の本格スポーツモデルだ。
今回はGRブランドにラインナップされた数モデルを、車の走行性能を最大限に味わえるサーキットで試乗してきたので報告したい。
86以上、86GRMN未満というチューニングレベルがおいしい“GR”
▲FRスポーツである86の走りのレベルを最大限高めたGRMN(限定100台/完売済)を意識したチューニングが施してあり、かつ普段使いもこなせるハイバランスなスポーツカーだ。発売予定は今年の冬とのこと
以前試乗した100台限定販売の“86 GRMN”はものすごく良かった。チューニング箇所とそのレベルも文句なく、完成度の高さからいって価格も高いがそれ以上の価値があると思った1台だ。
今冬に登場する“GR 86”はそこまでのハードチューニングはしていないものの専用の前後エアロパーツ、チューニングサスペンション、RAYZ製17インチアルミホイールなど、エクステリアもベース車と見た目が異なる。加えて“GRMN”用のトルセンLSDを装着しているなど、明らかに“GRMN”を意識したチューニングが施されている。
さっそくサーキットを走ってみる。
ハンドリングはとにかく安定志向で不安定な部分がない。とは言え、攻め込めばそれに応えるポテンシャルもある。基本に忠実なセッティングを高度に施してあることで、バランスが取れたモデルだ。これ以上は過ぎてしまうというギリギリの部分まで手を入れた状態で提供されている。
普段使いはもちろん、休日のサーキット走行もこのまま持ち込んで楽しめるモデルであることは間違いない。
▲センターシングルエキゾーストテールパイプもGR専用品だ。またフロントブレーキは6ポッド、リアは4ポッド+ドリルドローターブレーキを採用するなど、制動パワーもアップしている。ちなみにシートはサイドエアバッグ付きのレカロ製を標準装備!煮詰められたチューニングで快速! ヴォクシー GR SPORT
▲良い意味で最も期待を裏切ってくれたのがミニバンのヴォクシー GR SPORTだ。見た目も“特別感”や“個性”を主張しているが、全体の仕上がりが良くなったことで普段使いの乗り心地も向上している
背の高いミニバンのヴォクシーはどうだろうか。全高が高いだけに攻めた走りでの不安要素は否めない。だが、ヴォクシーGR SPORTの佇まいは安定感が増した印象がある。架装された空力パーツのイメージもあるが車高は明らかに低い。その他にもボディに補強を加えているというので、その走りが楽しみである。
さっそく走り出すと、2LエンジンとCVTの組み合わせは結構パワフルで、1620kgのボディをグイグイと引っ張る。
ブレーキフィールもとてもいい。中速コーナーでもボディは水平を保ちながら不安なくコーナーを走り抜ける。この安定感と速さは意外であった。ボディ剛性向上も相まって、ローダウンした専用のサスペンションユニットはベース車よりも上質な乗り心地に感じた。専用シートはソフトでいて、ホールド性もしっかりとしているなど、乗る前に感じていた「ミニバンだから」という不安を払しょくしてくれた。
▲ブレースを追加するなどのボディ補強と、専用チューニングサスペンションで引き締められた足回りが装着され、その走りの次元は確実にベース車より上。インテリアもアルミペダルや小径ステアリングホイールを装備することでスポーティさを演出している強力なモーターパワーを生かしたチューニング プリウスPHV GR SPORT
▲元々完成度が高く、エコカーの代名詞のようなプリウスPHVだが、「よりスポーティに」という方向性でチューニングを施したGR SPORTは、見た目と走りを手に入れた贅沢な1台だ
ベース車は可能な限り空力を重視し、直進安定性を高める方向に振った。結果、逆に横風などでフラつくことがあったが、GR SPORTはどう味付けしてきたのか楽しみであった。試乗前に開発メンバーに、トヨタが得意とする“アルミテープ”を使った方が良いのでは? と聞いてみたが、ハンドリングのレスポンスが遅れるのでアルミテープは使わず、エアロ構造を見直すなどの本質的な改善を施したという。
これは期待以上に良かった。
車高はベース車に対し若干低い程度。元々の空力を意識したスタイリングも相まって、エアロパーツで武装すると見た目は一気にスポーティさが増す。
アクセルを強めに踏み込むと、静かにして強力な加速で飛び出してゆく。専用チューニングのサスペンションと構造を見直したエアロパーツの効果か、ベース車にあったフラつきが解消されていた。中速コーナーでも軽快感が増している。
ボディ剛性を高めている分、走行中やエンジンが始動したときの気になる振動も少なく、間違いなく車としての性能は数段グレードアップしている。走行安定性が増しているのは、前後のトレッドも最適化した結果とのこと。ベース車の欠点を見事にクリアしたモデルと言えるだろう。
▲専用チューニングサスペンションの装着で車高は低く抑えられているため、どの角度からもカッコよく見える。インテリアだが、専用タコメーターやアルミペダルなどでスポーティな演出もされているまるでスポーツカーのようなSUV ハリアー GR SPORT
▲試乗したのは2Lの4WDターボ仕様。その安定した速さは、同乗していた編集部員も驚くほど。400万円で買えるSUVの中では最も完成度の高い1台かもしれない
GRラインナップの中でも、個人的には最もバランスのとれたパーツを装着していると思う。簡単に言えば見た目がカッコイイのだ。トヨタというブランドに頼らない、ハリアーならではの雰囲気を持つベース車のデザインはもともと高く評価している。そこから大きく逸脱せずに「さらなるスポーティさ」を作り出すGRのデザインチームはすごい。
では走りの性能はいかがだろうか。GRは2LのNA(2WD/4WD)とターボ(4WD)の2種類をラインナップするが、試乗したのは2Lターボの4WDモデル。
元々ハリアーはレクサスNXよりも軽快でスポーティな走りが特徴のモデルだ。それをさらに走りのSUVに仕立てたGR SPORTには期待が持てる。35ミリも車高を下げた見た目から、明らかにベース車とは違う雰囲気を醸し出している。
スポーツモードにセットし一気にアクセルを踏み加速する。中速~高速コーナーでもアクセルを踏み込んで行けるほどの安定感。SUVとは思えない素晴らしいハンドリングで、140km/hを超える速度から一気に60km/hまで減速させる激しいブレーキングをしても不安がない。そこからアクセルベタ踏みで一気に加速させても挙動が安定しており、まるでスポーツカーのような軽快さがある。
気づけば、同乗していた編集部員が「今乗っているのってSUVで間違いないですよね!?」と何度も確認してくるほどの速度でサーキットを周回していた。ボディ剛性のバランスもすこぶる良く、現在400万円以下で新車購入できるFFベース4WDのSUVでは、最も完成度が高いのではないかと感じるモデルだ。
▲ベースグレードは2Lガソリン車、2Lターボ車の2種類。スポット打点追加やブレース追加によって見えない部分に補強が加えられている。低く抑えられた車高や専用マフラーを装着するなど明らかにベース車よりも見た目はスポーティだ見た目の雰囲気も乗り味も玄人好みな快速セダン マークX GR SPORT
▲すっかり成熟したFRセダンをベースにGRが手を加えることによって、アナログ的なセッティングを味わえる希な1台となっている。ジャジャ馬的車が好きな人には刺さること間違いなし
以前、「最も成熟したFRセダン」と評価したマークXの“GR SPORT”版だ。マークX GR SPORTは2.5Lと3.5Lモデルの2グレードが存在する。
今回試乗したのは350RDSという3.5Lエンジンを搭載したグレードだ。エクステリアのデザインは他のGRモデルからすると一風変わっていてノスタルジックな印象。また、モノブロックキャリパーとアルミ合金のハブが奢られているところも只者ではない感じを醸し出す。とは言え、シャシーはひと昔前のものであり、剛性アップを含めクオリティ高めていくのはそう容易ではない。
サーキットなので全開走行で試してみたところ、ボディ剛性はこのシャシーをベースにしていることを考えれば、すべての打ち手を打ったと思えるほど申し分ないレベルに仕上がっている。足回りは硬めなだけにサスペンションの動きに対して挙動が敏感だ。しかも良い意味でコントロールする楽しさが残されていて、サーキットでも楽しい。
他のGR SPORTに比べるとジャジャ馬な感じがするが、逆に私好みだ。本当はもっとロールを抑えたいところだが、ジャジャ馬っぷりがさらに増すことから、トータルバランスを考えたセッティングなのだろう。
トヨタ車では、このようなアナログ的なセッティングというか、味付けが施されるモデルは最後になるのではないかと思う。これは、GRの開発メンバーが楽しんで作っていることを感じ取れるモデルだ。
▲2.5Lと3.5Lの2種類をラインナップするが、今回試乗したのはよりパワフルな3.5Lモデル。LEDイルミネーションビームなどセダンとしてのおしゃれアイテムを装備する反面、スポット打点追加、ブレース追加でボディ剛性アップと走りのポテンシャル向上に見えないところも強化されている車好きが作る車は面白いに決まっている
GRブランドのモデルに乗って、開発に関わっているすべての人が楽しく車作りをしている事を感じた。それは車からも伝わるし、実際に会話した開発スタッフの言葉の節々からも感じられる。こんな人たちが作る車だから乗って楽しいに決まっているのだ。車好きな人たちの“ひと味”が加えられたモデル、ぜひ味わってもらいたい。
【SPECIFICATIONS】
■グレード:86 GR SPORT※2017年10月26日現在の発表情報
■乗車定員:--名 ■エンジン種類:-- ■総排気量:2L
■車両重量:1240kg ■最高出力:-- [ps]
■最大トルク:--(--)/-- [N・m(kgf・m)/rpm]
■駆動方式:FR ■トランスミッション:6MT
■全長×全幅×全高:4290×1775×1310(mm) ■ホイールベース:--mm
■車両価格:--万円(税込)
■グレード:ヴォクシー GR SPORT
■乗車定員:7名 ■エンジン種類:直4DOHC ■総排気量:1986cc
■車両重量:1620kg ■最高出力:112(152)/6000[kw(ps)/r.p.m.]
■最大トルク:193(19.7)/3800 [N・m(kgf・m)/rpm]
■駆動方式:FF ■トランスミッション:CVT
■全長×全幅×全高:4795×1735×1810(mm) ■ホイールベース:2850mm
■車両価格:325.728万円(税込)
■グレード:プリウスPHV GR SPORT
■乗車定員:4名 ■エンジン種類:直4DOHC+モーター ■総排気量:1797cc
■車両重量:1550kg ■最高出力:72(98)/5200[kw(ps)/r.p.m.]
■最大トルク:142(14.5)/3600 [N・m(kgf・m)/rpm]
■モーター最高出力:53(72)/23(31) [kw(ps)]
■モーター最大出力:163(16.6)/40(4.1) [N・m(kgf・m)]
■駆動方式:FF ■トランスミッション:CVT
■全長×全幅×全高:4685×1760×1470(mm) ■ホイールベース:2700mm
■車両価格:371.196万~411.696万円(税込)
■グレード:ハリアー ターボ エレガンス GR SPORT 4WD
■乗車定員:5名 ■エンジン種類:直4DOHCターボ ■総排気量:1998cc
■車両重量:1720kg ■最高出力:170(231)/5200~5600[kw(ps)/r.p.m.]
■最大トルク:350(35.7)/4000 [N・m(kgf・m)/rpm]
■駆動方式:4WD ■トランスミッション:6AT
■全長×全幅×全高:4770×1835×1655(mm) ■ホイールベース:2660mm
■車両価格:399.6万円(税込)
■グレード:マークX 350RDS GR SPORT
■乗車定員:5名 ■エンジン種類:V型6気筒DOHC ■総排気量:3456cc
■車両重量:1550kg ■最高出力:234(318)/6400[kw(ps)/r.p.m.]
■最大トルク:380(38.7)/4800 [N・m(kgf・m)/rpm]
■駆動方式:FR ■トランスミッション:6AT
■全長×全幅×全高:4795×1795×1420(mm) ■ホイールベース:2850mm
■車両価格:442.8万円(税込)
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