【試乗】新型 BMW M3ツーリング|荷室の存在を忘れるハンドリング! 荷物運びからサーキットまでこなす“万能スポーツカー”
カテゴリー: BMWの試乗レポート
2023/11/20
▲ハイパフォーマンスモデルのM3初となるツーリング。使い勝手の良い3シリーズ ツーリングをベースに、BMW M社が開発したS58型エンジンやサーキットでも威力を発揮するM専用4WDが搭載されたセダンと異なる味付けの優れた“グランドツーリングカー”
ぶったまげたのだ。しかも二度も。一度目はそのあまりに快適なグランドツーリング性に。そして二度目はというと、「コレは今サイコーなビーエムだ、欲しい!」と思ったので即広報車に備え付けの価格&オプションを見た。先に後者、つまり価格の話を済ませておくと、この「M3コンペティション M x Drive ツーリング」の車両本体価格は1394万円。そして、撮影車にはオプションでカーボンブレーキなどが奢られており合計額は1650万円オーバー。乗り出し価格は2000万円近い! M3も遠くなりにけり、です。
それはさておき。まずはM3のワゴンモデル(ツーリング)はコレが史上初。M5にはツーリングがあって、欧州では1990年代から2000年代にかけて車通に人気のモデルだった。何よりBMW Mのスタッフ(スペシャリスト)のマイカーとして最も人気があった車だったのだから、ホンモノだ。M3の性能と価格、サイズが向上したことで以前のM5ツーリングの役割を事実上M3ツーリングが引き継ぐことになる。もっともM5ツーリングも復活することになったのだが……。
長らく高性能ステーションワゴンはアウディスポーツとメルセデスAMGの独占するところだったから、BMW Mとしても指をくわえて眺めているわけにはいかなかったのだろう。高性能な4WDパワートレインを手に入れたことも、ワゴン登場を後押ししたに違いない。
もっともMのワゴンは既存の高性能ワゴンに比べて、よりスポーティさを強調したドライブフィールとした。そこがMの存在理由でもあるからだ。
▲冷却性能を高めるため大型エアインテークを採用、縦型キドニー・グリルには横方向のダブル・バーが備わる
▲フェンダーの張り出しなどにより、ベーシックグレードより全長85mm、全幅80mm拡大している実際に乗ってみると、まずは荷室の存在を忘れてしまう。否、そもそも乗り出した瞬間からステーションワゴンにありがちな“背中に広い空間を背負っている”感覚などなかったけれど、カントリーロードを流したりワインディングを攻めたりしても、セダンとほとんど変わらぬハンドリング性をみせる。もちろん、セダンと全く同じパワートレインの、それは恩恵でもあるのだけれど、それにしてもボディの強さというかシャシーのしなやかさというか、ハンパない仕上がりだ。
当然セダンとは違うアシのセッティングになっている。空荷ではサーキット走行にも耐え、積載時には安定したツーリング性能を実現する、そんな仕立てになっている。オールマイティなスポーツカーというカテゴリーではポルシェ 911が長らく秀でた存在だったけれども、いっそうの積載性と利便性を手に入れたM3ツーリングは勇躍、911に勝る存在になった。懐かしいシーンを思い出す。グループAレースで大活躍するボルボ ワゴンの姿だ。M3ツーリングはアレの現代公道版だ。
もっとも、M3ツーリング最大のライバルはBMWアルピナ B3ツーリングだろう。一足お先に同じSエンジンを積んだAWDのスーパーワゴン。お互いの得意な領域を侵食しない紳士協定も、アルピナがBMWグループに吸収されることとなった今では必要ないということだ。
そのことを今回、M3ツーリングを1000km乗ってみて確信した。もしBMW Mがアルピナの存在を意識するなら、むしろはっきりとスポーツカー寄りに仕上げてくるはず。一方のB3ツーリングはというと極上のグランドツーリングカーだったから、M3ツーリングは少なくともGT性では多少劣るに違いないと筆者は踏んでいた。
▲最高出力510ps/最大トルク650N・mを発揮する、3L直6ツインターボエンジンを搭載ここで冒頭、一度目の“ぶったまげ”に話は戻るというわけだ。確かに街中の低中速域における乗り心地ではアルピナB3に軍配が上がる。フラットでソリッドなM3の乗り味にはジャングルジムをゴムで包んだような骨格の頑丈さがある。好みの問題とはいえ、心地よいのはアルピナだ。
ところが高速道路の速度域、100km/hを超えてくると明らかに乗り心地がよくなって、動きたがる存在感ある前アシも落ち着きを見せはじめる。アルピナとはまた違う感覚とはいえ、心地よいクルージングであることは確か。セダンのM3にはなかった味付けで、おそらくワゴン専用のアシになったがゆえだろう。荷物を積めばきっともっと安定するに違いない。
M3ツーリングは、BMWアルピナ B3ツーリングと比べても甲乙付け難いグランドツーリングカーだった。
▲ブラックのM鍛造ホイール(フロント19インチ/リア20インチ)を標準装備。制動と冷却性能を高めたMコンパウンド・ブレーキが備わる
▲カーブド・ディスプレイを備えた最新ブランドデザインを採用するが、Mハイパフォーマンスモデルにはシフトノブが備わる。Mモデル専用のメーターパネルやステアリングも装着する
▲Mスポーツ・シートを標準装備。オプションでMカーボン・バケット・シートが用意される
▲ラゲージ容量は通常500L、後席を倒せば最大1510Lまで拡大する
自動車評論家
西川淳
大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。
ライバルとなるBMWアルピナ B3ツーリングの中古車市場は?

3シリーズ ツーリングをベースに、BMWアルピナが仕立てたハイパフォーマンスGT。エンジンはS58型をベースにアルピナがチューン。Mモデルがサーキットでのパフォーマンスを追求しているのに対し、アルピナは安心快適で速い、ラグジュアリーなグランドツーリングカーを追求している。
2023年11月上旬時点で、中古車市場に流通しているのはわずか1台。車両本体価格は1220万円。ホワイトボディからハンドビルドしていくアルピナの生産台数は年間1700台程度と桁違いの希少車のため、物件もごくわずか。いつまで待とうが永遠の希少車ゆえに、見つけた時が買い時のモデルである。
▼検索条件
BMWアルピナ B3ツーリング× 全国【試乗車 諸元・スペック表】
●コンペティション M xドライブ 4WD
| 型式 | 3BA-12GB30 | 最小回転半径 | 5.3m |
|---|---|---|---|
| 駆動方式 | 4WD | 全長×全幅×全高 | 4.81m×1.91m×1.45m |
| ドア数 | 5 | ホイールベース | 2.86m |
| ミッション | 8AT | 前トレッド/後トレッド | 1.62m/1.61m |
| AI-SHIFT | - | 室内(全長×全幅×全高) | -m×-m×-m |
| 4WS | - | 車両重量 | 1870kg |
| シート列数 | 2 | 最大積載量 | -kg |
| 乗車定員 | 5名 | 車両総重量 | 2145kg |
| ミッション位置 | フロア | 最低地上高 | 0.12m |
| マニュアルモード | ◯ | ||
| 標準色 |
アルピン・ホワイトIII |
||
| オプション色 |
ブルックリン・グレーメタリック、ブラック・サファイアメタリック、サンパウロ・イエローメタリック、アイル・オブ・マン・グリーンメタリック、ポルティマオ・ブルーメタリック、トロント・レッドメタリック、スカイスクレイパー・グレーメタリック、フローズン・ブリリアント・ホワイトM、オキサイド・グレーメタリック、ドラバイト・グレーメタリック、フローズンポルティマオブルーメタリック、タンザナイト・ブルーメタリック、フローズン・ブラック・メタリック、フローズン・オレンジメタリック、アヴェンチュリン・レッドメタリック、フローズン・ピュア・グレーメタリック |
||
| 掲載コメント |
- |
||
| 型式 | 3BA-12GB30 |
|---|---|
| 駆動方式 | 4WD |
| ドア数 | 5 |
| ミッション | 8AT |
| AI-SHIFT | - |
| 4WS | - |
| 標準色 | アルピン・ホワイトIII |
| オプション色 | ブルックリン・グレーメタリック、ブラック・サファイアメタリック、サンパウロ・イエローメタリック、アイル・オブ・マン・グリーンメタリック、ポルティマオ・ブルーメタリック、トロント・レッドメタリック、スカイスクレイパー・グレーメタリック、フローズン・ブリリアント・ホワイトM、オキサイド・グレーメタリック、ドラバイト・グレーメタリック、フローズンポルティマオブルーメタリック、タンザナイト・ブルーメタリック、フローズン・ブラック・メタリック、フローズン・オレンジメタリック、アヴェンチュリン・レッドメタリック、フローズン・ピュア・グレーメタリック |
| シート列数 | 2 |
| 乗車定員 | 5名 |
| ミッション 位置 |
フロア |
| マニュアル モード |
◯ |
| 最小回転半径 | 5.3m |
| 全長×全幅× 全高 |
4.81m×1.91m×1.45m |
| ホイール ベース |
2.86m |
| 前トレッド/ 後トレッド |
1.62m/1.61m |
| 室内(全長×全幅×全高) | -m×-m×-m |
| 車両重量 | 1870kg |
| 最大積載量 | -kg |
| 車両総重量 | 2145kg |
| 最低地上高 | 0.12m |
| 掲載用コメント | - |
| エンジン型式 | S58B30A | 環境対策エンジン | - |
|---|---|---|---|
| 種類 | 直列6気筒DOHC | 使用燃料 | ハイオク |
| 過給器 | ターボ | 燃料タンク容量 | 59リットル |
| 可変気筒装置 | - | 燃費(10.15モード) | -km/L |
| 総排気量 | 2992cc | 燃費(WLTCモード) |
9.8km/L
└市街地:6.8km/L └郊外:10.1km/L └高速:11.9km/L |
| 燃費基準達成 | - | ||
| 最高出力 | 510ps | 最大トルク/回転数 n・m(kg・m)/rpm |
650(66.3)/5500 |
| エンジン型式 | S58B30A |
|---|---|
| 種類 | 直列6気筒DOHC |
| 過給器 | ターボ |
| 可変気筒装置 | - |
| 総排気量 | 2992cc |
| 最高出力 | 510ps |
| 最大トルク/ 回転数n・m(kg・m)/rpm |
650(66.3)/5500 |
| 環境対策エンジン | - |
| 使用燃料 | ハイオク |
| 燃料タンク容量 | 59リットル |
| 燃費(10.15モード) | -km/L |
| 燃費(WLTCモード) | 9.8km/L
└市街地:6.8km/L └郊外: 10.1km/L └高速: 11.9km/L |
| 燃費基準達成 | - |
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