【試乗】新型アウディ e-tron GT│初のBEVクーペはアウディらしさそのまま! 俊足かつフラットな乗り心地は日常使いもイケる!
カテゴリー: アウディの試乗レポート
タグ: アウディ / スポーツセダン / クーペ / 4WD / e-tron GT / EDGEが効いている / c!
2022/01/17
▲アウディのEVシリーズe-tronの最新モデル「e-tron GT」。アウディのクワトロ4WDシステムはもちろん、ブリスターフェンダーやエアサスペンションなども採用したハイパフォーマンスGTカーだポルシェ タイカンとベースを共有する姉妹車ではあるが……
フォルクスワーゲングループにおいて、電動化をけん引する役割を担うブランドがアウディだ。2021年9月には、新戦略「Vorsprung 2030」を発表。それによると、2026年以降に投入する新型車はすべて電気自動車とし、2033年を最終期限に内燃エンジンの生産を段階的に中止していくという。もはやフル電動化に向けて待ったなしというわけだ。
e-tron GTは、SUVのe-tronに続くアウディのBEVの第2弾となる4ドアクーペ。BEV(電気自動車)用プラットフォーム「J1」を採用し、ポルシェ タイカンとは姉妹車にあたる。先行して発売されたタイカンは、すでにラインナップを拡充し2WDのベースモデルから、4S、GTS、ターボ、ターボSと5つのグレード、さらにクロスツーリスモという派生車も展開する。一方でe-tron GTは、いまのところベースモデルとハイパフォーマンスなRSモデルのRS e-tron GTの2グレードが用意される。
ボディサイズは、全長4990mm、全幅1965mm、全高1415mm、ホイールベース2900mmと、タイカンに比べて全長は25mmほど長いがその他はほぼ同寸だ。サイドから見たルーフラインなどのシルエットもとてもよく似ている。ただし、特徴的なデザインのLEDライトやシングルフレームグリルを配したフロントマスク、立体的な造形のブリスターフェンダーなどでアウディの個性をしっかりとアピールしている。
インテリアはデジタルメーターのバーチャルコックピットをはじめ、センターに10.1インチのタッチスクリーンを配している。インテリアに関してはポルシェとの共通性はまったくみてとれず、最新のアウディデザインにのっとったものだ。e-tron GTの試乗車には、オプションのシート表皮などにペットボトルや漁網などをリサイクルしたクロス素材を使用するレザーフリーパッケージが装着されていたが、個人的には肌触りや座り心地の面でもレザーよりもこちらの方が好みだった。
一見タイトそうに思える後席だが、足元を避けるようにバッテリーを配置しており、身長178cmの大人が十分にくつろげるスペースを確保し、しっかりとホールド感のある形状のシートが設えられている。カタログ上の乗車定員は5人だが、実際はエマージェンシー用の4+1といったところだ。
パワートレインは、システム電圧は800Vで総電力量93.4kWh(実容量84kWh)の駆動用バッテリーをフロアに配し、フロントとリアアクスルそれぞれに2基のモーターを搭載する。リアに2速のトランスミッションを組み合わせ、駆動方式はアウディらしくクワトロ(4WD)のみの設定となっている。
e-tron GT のシステム出力は、350kWでローンチコントロール使用時は390kWにまでアップする。最大トルクは640N・m。一方のRS e-tron GTは、440kWでローンチコントロール使用時は475kW。最大トルクは830N・mとなっている。これは前者がタイカン4S(320kW/390kW)相当、後者がタイカンGTS(380kW/440kW)とターボ(460kW/500kW)あいだくらいと細かくセッティング変更されている。このあたりは、それぞれのブランドをしっかりとすみ分ける戦略ということだろう。一充電走行距離はベースモデルもRSモデルも共通の534km(WLTCモード)となっている。
▲クーペのような流れるルーフラインをもつが、ラゲージは独立しておりセダンに分類される
▲テールライトは左右が連結した直線基調のデザインとなっている
▲左の充電ポートはCHAdeMO急速充電用、右には普通充電用ポートが備わる
▲ボディにはアルミニウム、ルーフにはカーボンファイバーを採用し軽量化を施している
▲フロントには81L(写真)、リアには405Lのラゲージを備えるe-tron GTは、いい意味で普通のアウディだ。電気自動車というと急激にトルクが立ち上がったり、回生ブレーキが強く働いたりと、違和感の伴うものが多い。ところが、この車にはそういった演出はない。基本的にはアクセルペダルをはなすとコースティングする設定になっている。もし、回生ブレーキをのぞむならステアリングに備わるパドルシフトで、シフトダウンのような操作をすれば回生のレベルを3段階で調整できる。これはタイカンにはない装備だ。
または MMI システム設定で「自動」を選択しておくと、ナビゲーションルートと車載センサーからのデータに基づいて、コースティングと回生を自動で切り替えてくれる。オーバーブースト時の0-100km/h加速は4.1秒と十分に速いが、気持ち悪くなるほどでもなくちょうどいい。足回りは、電子制御ダンパーにスプリングを組み合わせたもので、オプションの21インチホイールを組み合わせていた。さすがに荒れた路面では突き上げを感じる場面もあったが、基本的にはボディ剛性が高く、乗り心地はフラットなものだ。
一方のRS e-tron GTは、0-100km/h加速3.3秒とベース車に比べれば明らかに速い。アクセルペダルにそっと力を込めれば、ドライバーの意志に沿うように瞬時に加速する。足回りにもタイカンと同様の3チャンバー式エアサスペンションを採用しており、またオプションのオールホイールステアリングを装着していたこともあって、クイックな回頭性ながら、路面にはりつくような盤石のコーナリングをみせた。こちらの方がよりスポーツカーライクなタイカンに近い印象を受けた。
厳密に測定したわけではないが、メーターに表示された電費からカウントすれば、実際の走行可能距離は400km前後といったところだろう。充電に関しては、200Vの普通充電で最大8kWまで、急速充電(CHAdeMO)では150kWまで対応している。車両価格はe-tron GTが1399万円、RS e-tron GTは1799万円。参考までにタイカン4Sは1462万円、GTSは1807万円、ターボは2037万円。4Sはバッテリー容量が79.2 kWhで、93.4kWh仕様はオプションであることなども考慮すれば、e-tron GTはかなりリーズナブルな価格設定といえる。
2モデルの試乗を終えて、ポルシェと同じ素材を使いつつも紛うことなきアウディに仕立ててあること。そしてベース車とRSモデルの違いをしっかりと打ち出していること。さすがだと感じた。そして個人的には日常使いするなら、e-tron GTのナチュラルさがいいと思った。
▲インテリアはシートポジションを低くし、包まれ感を高めたスポーティなデザイン。スマホ用ワイヤレス充電やBang&Olufsenプレミアムサウンドシステムはオプション装備可能
▲ペットボトルや漁網などのリサイクル素材を採用したインテリアは、レザーフリーパッケージにて提供される
▲居住性向上のため足元に設けられたくぼみは、バッテリーパックを板状ではなく複雑な形状にすることで実現している
▲シフトセレクターは新しいスライド式、センターコンソールはピアノブラックを採用
▲スポーツ表示などに切り替えもできるアウディバーチャルコックピット【関連リンク】
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