【試乗】新型 マセラティ グラントゥーリズモ トロフェオ|新たなブランドクオリティを創出した、これぞ究極のグランドツアラー!
カテゴリー: マセラティの試乗レポート
2024/08/15
▲2022年に復活を果たしたブランドのアイコンモデル「グラントゥーリズモ」。かねてより宣言していたBEVに加え、MC20にも採用している自社製V6ツインターボエンジン“ネットゥーノ”搭載モデルも用意された マラネッロ製V8からV6ツインターボ “ネットゥーノ”へ
2019年秋、マセラティは次世代のモデル戦略を発表している。新型スポーツカー(のちのMC20)やレヴァンテより小さなSUV(同グレカーレ)の登場を宣言し、さらに次世代のグラントゥーリズモおよびグランカブリオもまたフル電動化すると明言して、車好きをあっと言わせた。
なんといってもグラントゥーリズモ=GTといえば、ブランドの歴史と伝統を体現するモデルである。中でも直近2世代にはマラネッロ製V8エンジンが積まれており、その官能フィールもまたエレガントなスタイルと並んで大いなる魅力のひとつだったのだから。
もちろんマセラティはエンジン好きマニアの気持ちも決して忘れてはいなかった。蓋を開けてみると新型グラントゥーリズモにはBEVのフォルゴーレとともに、V6ツインターボエンジン“ネットゥーノ”を搭載した内燃機関エンジンモデルも用意されていたのだから。
マセラティの威信をかけて開発され、まずはMC20に積まれて注目を集めたV6ネットゥーノのウエットサンプ版を積んだマセラティの新型GT。出力違いでトロフェオとモデナの2グレードが用意されている。今回、京都までのロングドライブパートナーに選んだのは550ps版のトロフェオだ。しかも、世界300台限定(うち、このグリジオ・ラミエラ・マットのトロフェオは75台)の75th アニバーサリーエディションだ。
何が75周年なのか。新型デビュー時の2022年が、マセラティ製GTが誕生して75年という節目の年だったらしい。1947年デビューの“A6 1500”がいわば初代マセラティGTだ。
▲ベーシックグレードとなる「モデナ」。“ネットゥーノ”エンジンは最高出力490ps/最大トルク600N・m75周年のトロフェオを語る前に、イタリアで試乗した490psのモデナについても少しだけ触れておこう。モデナは、よりグランツアラー志向の強いモデルで、そういう意味ではマセラティの古典により近しい。ドライブモードに過激なコルサ設定のないことからもそれはうかがえる。FRとして動的に理想的な前後重量配分(52:48)を存分に生かした一体感溢れるハンドリングが魅力の1台だった。旧型よりも格段に乗り手とフィットする感覚があって、ボディサイズ的にはほぼ同じであるにもかかわらず、随分と小さなクーペを駆っているという印象さえ抱いた。乗り心地も洗練されており、高速クルージングも非常にジェントル。究極のデイリーGTだろう。
▲取材車両は限定モデル「75th アニバーサリーエディション」。ボディカラーはグリジオ・ラミエラ・マット(写真)とブラック系のネロ・コメタが用意されている
▲F1由来の技術であるプレチャンバー(副燃焼室)燃焼システムを採用した3L V6ツインターボエンジン“ネットゥーノ”対する550psのトロフェオは、前述した重要配分など車体に起因する基本的な魅力はそのままに、数値のパワーアップ以上にはっきりとワイルドなキャラを発散する。エグゾーストサウンドも一層たけだけしく、ハンドリングもニンブルに感じた。乗り心地もモデナに比べてより硬質だ。実際、改めて1000kmほど乗ってみればモデナで感じたよりもさらにボディが小さく感じられ、確実にかつよく動く足の様子からボディのしっかり感さえ、ひとつの手応えとして楽しめた。
街中でのライドフィールがやや硬質にすぎるというきらいもあったが、速度を上げていくとこなれていく印象である。これはトロフェオに採用されているエアサスペンションシステムの影響が大きい。ドライブモードを変えることで、例えばコンフォートにすれば街中でも幾分ストレスは減るが、それでもタイヤの硬さが如実に伝わってくる。高速ドライブではコンフォートだと若干足元が緩むので、GTモードが良い。
とにかく日本の巡航速度域でも素晴らしい安定感を誇る“グラントゥーリズモ”であった。筆者は年に50モデルほど東京・京都往復の長距離テストを行うが、マセラティGTと並ぶ、もしくはそれ以上のモデルというと片手で数えるほどしかない。もちろん、いずれも価格的に(高くなった)新型マセラティGT以上のモデルばかり。
軽くなった車体とシャシーの制御、そして何よりV6になったことによる動的な重量バランスの最適化が利いている。ペタッと路面に張り付いてすこぶる安定した走りを見せつつも、ステアリングには常に己の自由となる感覚があって頼もしい。まさに、車自身が道をよく知っていることを実感する。
ときおり思い出したようにエンジン回転を上げてやれば、普段はおとなしいV6サウンドも迫力の咆哮に転じて、安定したクルージングで生じた眠気を吹き飛ばす。京都まであっという間の450km、精神的、心理的にも速いし、肉体的にも疲れない。これぞ究極のGTだ。
先代までの爆音は確かになくなった。しかも価格的には一気にスーパースポーツカーの仲間入り(撮影車両で乗り出しおよそ4000万円! )。MC20がバーゲンプライスに思えるほどで、これまでのV8 GTユーザーには手を出しづらいモデルになったことも確か。
けれども性能、質感ともに大幅にアップしているのもまた事実。新たなブランドクオリティを作るというマセラティの決意を、主軸モデルであるGTから大いに感じ取った。
▲マセラティらしいロングノーズのクラシカルなプロポーション。ルーフラインを下げることで、トライデントロゴを配したピラーのカーブを強調する
▲トロフェオはカーボンパーツなどでよりスポーティなフロントマスクに仕立てられている
▲ボディサイドにはトロフェオのエンブレムが備わる
▲75周年のロゴが入ったホイールを装着
▲機能をディスプレイに集約した現代的インテリア。シフトスイッチはセンター部に、スタート/ストップボタンはステアリングに配される
▲グリジオ・ラミエラ・マットではステッチなどにレッドを採用、ネロ・コメタはミントグリーンが用いられる
自動車評論家
西川淳
大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。
マセラティ グラントゥーリズモ(旧型)の中古車市場は?

2007年に登場した4シーターの2ドアスポーツクーペ。ピニンファリーナがデザインしたクラシカルで優美なスタイルを備えている。最高出力460ps/最大トルク520N・m(後期型)を発揮するフェラーリ製V8自然吸気エンジンを搭載する。2019年11月に最終生産モデルとなる限定車「ゼダ」によって幕が下されるまでに、2万8805台がモデナ工場で生産された。
2024年8月前半時点で中古車市場には90台ほどが流通しており、支払総額の価格帯は330万~2200万円。2017年のマイナーチェンジ以降の物件は20台程度が流通している。販売期間が長いため価格や状態には幅がある。
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