【試乗】新型日産 サクラ│シンプルと静粛性を極め、最上級のシティコミューターになった軽EV
2022/10/16
▲自動車テクノロジーライターの松本英雄氏が、日産 サクラに試乗した際のレポートをお届けするシンプルさを軸に、上質を追求したデザイン
テストコースでもとても良い印象を得ることができた「日産 サクラ」。横浜みなとみらい地区周辺で公道試乗をすることができたのでお伝えしたい。
まず、皆さんが気になることのひとつに、航続距離はどうだろう? という部分があるのではないだろうか。公称値ではWLTCモードで180kmとうたっているが、ご察しのとおりそこまでは難しいであろう。
仕事柄、市街地はよく走るが箱根に行かない限り、走っても60kmほどである。満充電での走行距離を気にするだろうが、1日1回充電すればそれでいいのである。そういう使い方を目指したモデルだということをまずご承知おきいただきたい。
しかし、この車の真意は何かと考えれば、軽自動車クラスにおいては最高の心地とストレスフリーを提供するのではないか……とテストコースで感じていた。


まず、デザインは至ってシンプル。決してつくりの良さなどは強調していない、軽自動車の様相だ。
ただし、ドアの内側などのプレス技術は、他の工場で作った日産のモデルよりも精度が高い。これは三菱の恩恵と言えるだろう。
室内に乗り込むと、サクラの良質ともいえる内装の質感がある。奇をてらっていない雰囲気はシンプルで嫌味がない。シートも質感もとてもいい。

作り込まれた軽EVは静かさも秀逸
先日、“Z”の試乗会の時にテストコース内はサクラで案内されたのだが、フロントの助手席、後席ともに驚くほどの乗り心地のよさを体験した。本音を言えば、この広大な北海道のテストコースでもサクラに乗りたかった。それほど魅力を感じる1台だった。
さて、そろそろ走らせることにしよう。運転するにあたり、ポジションは申し分ない。
公道を走る際は、3つのモードの中のひとつ、エコモードで走らせた。アクセレーションと動力がモーターに伝わる感覚がスムーズで良好だ。乗りやすいというのだろうか。トルクを上手に路面に伝達しているため、踏み始めからグッとトルクが発生しても、真直性は極めて良好だ。そして加速が良く、路面のアンジュレーションでも追従性が良い。
EV車両にはよく重みがあるため、上下の動きに底づき感と収束が滑らかではないということがあるが、サクラにおいてはそのあたりの後味の悪さのようなものは全くない。とてもよく考えて作ってあると感じられる。また、e-pedalを使っての制動力も、慣れた人には心地よいだろう。
速度の落とし方とは思うが、ブレーキのタッチそのものも非常に優秀だ。とにかく静粛性は驚くほど良好だ。元町の石畳の道も走ってみたが、しっとりとした乗り心地に軽自動車に乗っている気がしないほどである。
また、緩やかなカーブも穏やかに安定させて、左右タイトな繰り返しの道でも、ステアリング操作による揺れ戻しのおさまりも良い。
気になっていたリアのタイヤハウスの音は他が静かなだけに多少あるようだが、とにかく静粛性は軽自動車としては秀逸である。

このクラスとしてスタビリティも乗り心地も極めて良好であるからこそ、しいて言えば形は軽自動車のディメンジョンだが、中身は普通乗用車以上のポテンシャルをもつ。そんな印象だ。
日産のモデルの中でも最強のシティコミューターであることに間違いはない。

自動車テクノロジーライター
松本英雄
自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。
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