【試乗】新型ロールス・ロイス ブラックバッジゴースト|もはやショーファーではない! 新ロールスを象徴するオーナードリブンカー
カテゴリー: ロールスロイスの試乗レポート
2022/07/04
 ▲オーナードリブンカーの世界最高峰サルーン「ゴースト」に追加されたブラックバッジ。ダークな内外装とスポーティな走りを備えた、新世代ロールス・ロイスを象徴する1台である
▲オーナードリブンカーの世界最高峰サルーン「ゴースト」に追加されたブラックバッジ。ダークな内外装とスポーティな走りを備えた、新世代ロールス・ロイスを象徴する1台である新世代ロールスロイスを象徴するダークなスポーティ仕様
購入者の平均年齢が最も高かったブランドが、今や最も若々しいブランドになった。ロールス・ロイスだ。以前は軽く60歳代を超えていたのに、レイスの登場を境にして20歳以上若返ったらしい。もちろん、レイスやドーンといったスペシャルモデルだけでは若々しさを維持することはできない。ニューリッチのファミリーカーとして登場したブランド初のSUV、カリナンの存在も実に大きいし、そもそもこれら新世代ロールスのドライブフィールが(以前とは大きく異なって)ウルトラモダンであることもまた高級ドライバーズカーとして若き富豪たちを刺激した。
そう、ロールスロイスはもはやショーファーカーではなかった。後席にちんまりと座ることを潔しとしない、パーティに出席してもアルコールを口にしない、今時のビリオネアに支持されるような、立派なオーナードリブンカーなのだった。
その象徴的な存在がブラックバッジという新たなモデル展開だ。ロールスロイスが提唱する「贅沢の向こう側」(ポスト・オピュレンス)をダークに再定義した仕様で、まずはレイスに導入されて人気を博すと、その後、ドーンや先代ゴースト、さらにはカリナンにも設定され、今やブランドの“売れっ子トリム”となった。
ブラックバッジ化の基本メソッドはシンプル。まずはダークな色使いで内外装をキリッと締める。パワーアップされたエンジンを搭載する。併せてオートマチックのプログラムやブレーキシステム、サスペンションセッティングもよりスポーティに変更する。そしてロールスの定番チャームポイントである静けさからの脱出さえも可能で、シフトセレクターの「LOW」ボタンを押せば、エグゾーストサウンドが迫力を増し、強化された性能が解放されるという仕立てだ。
 
 ▲フロントグリルやエンブレムなどをブラックに変更、ブラックバッジ専用のカーボンを用いた21インチホイールが装着される
▲フロントグリルやエンブレムなどをブラックに変更、ブラックバッジ専用のカーボンを用いた21インチホイールが装着される ▲足回りにはエアサスペンションを採用。4WDや四輪操舵システムが備わる
▲足回りにはエアサスペンションを採用。4WDや四輪操舵システムが備わるそして第2世代へと進化し、ほとんどオールマイティな乗用車パフォーマンスを得た現行ゴーストに早くもブラックバッジ仕様が設定された。
6.75L V12ツインターボエンジンの最高出力はノーマルから29psアップの600ps、最大トルクも50N・mアップの900N・mと、もはやスーパーカーレベル。リッチなカーマニアの目にはそんなスーパーカースペックと並んで、カーボンコンポジットを複雑に用いた専用デザインの21インチホイールもまた大いに魅力的に映ることだろう。
スタンダード仕様のゴーストがすでにすさまじいパフォーマンスをみせてくれていた、そのブラックバッジである。現車を見る前から期待に胸が膨らんでいた。
 
 ▲テクニカルファイバーなどが用いられたインテリアもダーク基調で仕立てられている
▲テクニカルファイバーなどが用いられたインテリアもダーク基調で仕立てられているほとんど新車状態のブラックバッジゴーストを借り出し、いつものように京都へのロングドライブ。テストとはいえ、まずは“ナラシ”のようなドライブだ。
街中では新車ということもあってか、思っていた以上に乗り心地が硬めだった。時おりゴツゴツと小さめのショックを受けとる。タイヤの大きさがよくわかるとでも言おうか。そういえばレイスのブラックバッジもこれに似たライドフィールだったと思い出す。
首都高レベルの速度域ではまだ硬めの印象だったが、東名から新東名に入ってクルージングの速度域が上がってくるに従い、滑らかさを増した。足元がしっかりと動き、フラットライドをよくキープする。とてもクリーンな印象だ。ここ一発の加速はもちろん十二分の力強さで、大きさや重さをネガに感じることがない。腹の底に力を溜めて加速するような感覚もあって頼もしい。その間、V12エンジンのフィールもまたすこぶるつきのシルキーさ。サウンドも心地よく耳に届く。ドライバーをかき立てる何かが確実に存在するロールスロイスだ。
案の定、高速ツーリングでは疲れ知らず。たとえトラフィックが混んで平均速度が落ちてしまっても、クリーンな乗り味に感動していられる分、気が紛れる。周りも気遣ってくれるせいか、どんな状況であってもストレスなく走っていけた。
驚いたのは高速コーナーでの安定感だった。狙ったラインに載せやすいうえに、そこから外れることなくピタッと張り付くようにして駆け抜けることができた。アクセルコントロールもラクで、巨大なセダンをドライブしているとは思えない。なるほどグランドツーリングカーとしての魅力は、上々だったスタンダードをやや上回っていた。
 
 ▲ZF製8速ATと組み合わせられた、V12ツインターボ。0→100km/h加速はベーシックモデルより0.1秒速い4.7秒
▲ZF製8速ATと組み合わせられた、V12ツインターボ。0→100km/h加速はベーシックモデルより0.1秒速い4.7秒もっとも正直に言って、カリナンのときのようなブラックバッジ礼賛とまではいかなかった。
スタンダードでも十分。逆に言うと、ブラックバッジとしての期待値をやや下回る。高いGT性能と硬めの乗り心地(特に低速域)が相殺されて、ブラックバッジカリナンのように“惚れ込む”までには至らなかった。セダンとSUVとでは、ベースモデルの仕様やキャラクターが随分と違う。同じようなブラックバッジ化を施したとして、キャラクターの在り方が変わってしまうことも無理はない。それぐらい違わなければ、ゴーストのブラックバッジをわざわざ設定する必要などなかった、ということだろう。スタンダードとキャラクターがはっきりと違ったことで、ブラックバッジのレゾンデートルもまた際立つというものだ。
選ぶ理由をはっきりと個性として打ち出した。どちらを選ぶかは好み次第。少しでも思いどおりに動く感覚のある方を選びたいという人にとって、ブラックバッジゴーストはもってこいのロールスロイス製パーソナルサルーンだろう。
 
 ▲マスコットのスピリット・オブ・エクスタシーもブラックで仕上げられた
▲マスコットのスピリット・オブ・エクスタシーもブラックで仕上げられた ▲ブラックバッジのインテリアにも共通するという、無限の可能性を表すレムニスケートが配されている
▲ブラックバッジのインテリアにも共通するという、無限の可能性を表すレムニスケートが配されている ▲ダーク基調のインテリアはビスポークプログラムにより、オーナーの好みに合わせた仕立てが可能
▲ダーク基調のインテリアはビスポークプログラムにより、オーナーの好みに合わせた仕立てが可能 ▲リアシートは3座仕様(写真)と独立2座が選択可能に。リアエンターテイメントシステムなども用意される
▲リアシートは3座仕様(写真)と独立2座が選択可能に。リアエンターテイメントシステムなども用意される 
自動車評論家
西川淳
大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。
ロールスロイス ゴーストの中古車市場は?

2020年に2代目へとモデルチェンジしたラグジュアリーサルーン。フラッグシップのファントムよりやや小さくカジュアルな仕立てとなる、世界最高峰のドライバーズカーだ。シンプルなデザインに選び抜かれた素材を用いた、ポスト・オピュレンス(脱贅沢)をテーマとした内外装が採用されている。
2代目となる現行モデルの中古車は4000万円以上の相場で、少数ながら流通。すぐに手に入れたいという人には、中古車を選択肢に入れるのもオススメだ。一方、初代モデルは初期型なら1000万円台から探せるので、まずはそちらで「世界最高峰のドライバーズカー」を味わってみるのはいかがだろうか。 
 
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