【試乗】新型マセラティ MC20|運転を愛する人すべてを魅了するミッドシップスポーツ
カテゴリー: マセラティの試乗レポート
2022/06/09
▲新開発のV6エンジンを搭載する、新世代ブランドアイコンとなるスーパースポーツ。マセラティにとって、およそ半世紀ぶりの量産ミッドシップカーとなる洗練されたパフォーマンスは新たなマセラティ像にマッチする
ここ数年、にぎやかな自動車の話題といえば電動化に関するもので、中でもバッテリー電気自動車(BEV)の未来をめぐる議論が盛り上がっていた。一時は欧州勢のもくろみどおり、一方的なBEV化が勢いを増したように思えたものだが、パンデミックやロシアのウクライナ侵略によってエネルギーや資源の供給に困難が生じ始めると、欧州勢の考え方にもばらつきが見え始めた。BMWのようにトップがエンジン開発の可能性に言及するメーカーもあれば、ルノーのように環境面でBEVが必ずしも最良の解とはいえないと白状するメーカーも……。グローバル市場が相手の大メーカーならカスタマー選択肢としての内燃機関(ICE)やハイブリッドシステムの可能性を追求することは当然のことだろうし、一方、そんな大メーカーの間隙をつきたい中小ブランドなら電動化を一層押し進めるチャンスにもなろう。
イタリアの老舗マセラティも早くから電動化を宣言したブランドだ。中でも注目すべきは、マセラティにとって実に半世紀ぶりとなる量産ミッドシップモデル、MC20の登場である。まずは新開発のV6エンジンを積んで登場したが、実は来年以降に登場するBEV仕様が本命だといわれている。BEVありきのミッドシップ戦略であったということだ。
つまり、MC20とはブランドの過去と未来をつなぐ重要な架け橋的モデルになる。だからこそ唐突に見えることを承知でミッドシップパッケージを採用し、あえてスーパーカー市場へと打って出た。重いバッテリーを積むBEVにとって、ミッドシップレイアウトはSUVやラージサルーンといった大型モデルと同様に有利なパッケージでもある。
とはいえMC20最大の話題は、プレチャンバー燃焼システムを積んだ新開発の90度V6の3Lツインターボエンジンで、“ネプチューンユニット”と呼ばれている。これをダラーラが開発を下支えしたカーボンモノコックボディのリアミッドに積んだ。スポーツカーファンであれば涙もののパッケージであろう。たとえBEV化がその先に見えていたとしても……。
▲軽量なカーボンモノコックシャシーの製作などには、レーシングコンストラクターのダラーラが協力しているという
▲リアスポイラーはスタイルを損なわないさりげないデザインとされた日本上陸を果たしたMC20を早速試してみることに。外光のもとでMC20を初めて見た感想は、意外に大きく見えるということ。そのうえ写真で見る以上にグラマラス。リアのフェンダーラインなどはこの上なく美しい。フェラーリ以外で久しぶりにビューティフルなミッドシップカーが現れたと思った。
▲10インチのセンターディスプレイで各種操作を行うことで、スイッチ類の少ないすっきりした仕立てに。ステアリングにもコントロールスイッチを配置する走り出しての第一印象は、エンジニアリングの真面目さがとても目立つ車だということ。特にネプチューンユニット。ターゲットスペックを一途に狙って開発したという感じで、パフォーマンスは洗練されている。その分、遊び心には欠ける(フィールやサウンド)と思ったのだが、それがまた電動化時代を見据えた新たなマセラティ像とよくマッチしているようにも思えた。
どういうことか。
せっかくの新開発エンジンなのだからその存在をアピールしようと思うのが普通で、トルクの出方や高回転域でのフィール、吸排気のサウンドなどを強調してしまうケースが多い。ところがMC20のネプチューンユニットの場合、あくまでも車体とのコンビネーションで速さを作っているようなドライブフィールに終始するのだ。それゆえサウンドの音質も音量も随分とおとなしいように思えた。マセラティといえば、フェラーリ製F136 V8自然吸気ユニットを積んだ初代クワトロポルテあたりの高らかに鳴り響くエグゾーストノートを慕う人もいまだに多いが、もはやそれも昔話というわけだ。
話題のエンジンこそそれ単独でドライバーを魅了するようなものではない代わり、MC20という車体としてスポーツカーや車の運転そのものをこよなく愛するエンスーを一発でノックアウトする魅力に満ちていた。
▲F1テクノロジーであるプレチャンバー(副燃焼室)を備えるV6ツインターボ。0→100km/h加速2.9秒以下、最高速度325km/h以上とされるスポーツカーとしてのパフォーマンスは、すべての指標において超一級だと言っていい。しかもよくできたグラントゥーリズモで、500kmの長旅を一気にこなすしなやかさも持っている。それでいて街中では乗り心地もよく、ドライバビリティに優れている。ワインディングロードではもちろん、知らず息をつめて走ってしまうほどに楽しい。ステアリングフィールはあくまでもダイレクトかつソリッドで、前輪はハンドルを通じて両腕と直につながっているかのような動きをみせる。リアのトラクションのかかりは絶大で、一般道レベルであればどんなコーナーでも安心して踏んでいける。もちろんブレーキフィールは安心と正確さという点でロードカーとしては最高の部類。さすがにダラーラが開発に助力したというだけあって、カーボンモノコックシャシーのもたらすドライブフィールは“上質なダラーラ ストラダーレ”だった。
最終的にはBEVへと進化するということがにわかには信じられないくらい、エンジンとのコンビネーションに優れたミッドシップスーパーカーである。
▲ブランド初のバタフライドアを採用する
▲撮影車両にはオプションのフル・ナチュラル・レザー・インテリアが装着されていた
▲GT/Wet/Sport/Corsa/ESC offが選択できる、ドライビングモード・セレクターをセンターコンソール部に設置▼検索条件
マセラティ MC20× 全国
自動車評論家
西川淳
大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。
ライバルとなるミッドシップスーパーカーの中古車市場は?
フェラーリ F8トリブート

フェラーリの現行ミッドシップモデルとなる、2019年に登場したV8ツインターボエンジンを搭載するF8トリブート。内燃機関のみを用いた最後のV8フェラーリとして、過去のV8モデルをオマージュしたデザインが採用されている。中古車は30台程度が流通。価格は4000万~5100万円くらいと、フェラーリ人気を反映し、比較的高値安定となっている。
▼検索条件
フェラーリ F8トリブート× 全国ランボルギーニ ウラカン

ランボルギーニのミドルクラスミッドシップモデルといえば、2014年に登場したV10自然吸気エンジンを搭載するウラカン。ハイパフォーマンスバージョンや2WDモデルなど、バリエーションも多い。登場から年数が経っているため、中古車の流通台数も70台程度と多く、価格も2000万~4000万円と幅広い。
▼検索条件
ランボルギーニ ウラカン× 全国マクラーレン 720S

ブランドの中核となるスーパーシリーズの2シーターミッドシップが720S。リアミッドには4L V8ターボを搭載、スーパーシリーズの第2世代として2017年に登場した。スタンダードに加え、パフォーマンスとラグジュアリーをラインナップする。中古車流通台数は25台程度と3台の中では少なめ。価格は2500万円~となる。
▼検索条件
マクラーレン 720S× 全国【試乗車 諸元・スペック表】
●MC20 3.0
| 型式 | 7BA-MC30 | 最小回転半径 | -m |
|---|---|---|---|
| 駆動方式 | MR | 全長×全幅×全高 | 4.67m×1.97m×1.22m |
| ドア数 | 2 | ホイールベース | 2.7m |
| ミッション | 8AT | 前トレッド/後トレッド | 1.68m/1.65m |
| AI-SHIFT | - | 室内(全長×全幅×全高) | -m×-m×-m |
| 4WS | - | 車両重量 | 1500kg |
| シート列数 | 1 | 最大積載量 | -kg |
| 乗車定員 | 2名 | 車両総重量 | -kg |
| ミッション位置 | コラム | 最低地上高 | -m |
| マニュアルモード | ◯ | ||
| 標準色 |
ビアンコ・オーディス、ネロ・エニグマ、ロッソ・ヴィンセント、ジャッロ・ジェニオ、ブルー・インフィニート、グリージョ・ミステロ |
||
| オプション色 |
- |
||
| 掲載コメント |
※諸元・装備情報は一部本国仕様の情報を掲載しております |
||
| 型式 | 7BA-MC30 |
|---|---|
| 駆動方式 | MR |
| ドア数 | 2 |
| ミッション | 8AT |
| AI-SHIFT | - |
| 4WS | - |
| 標準色 | ビアンコ・オーディス、ネロ・エニグマ、ロッソ・ヴィンセント、ジャッロ・ジェニオ、ブルー・インフィニート、グリージョ・ミステロ |
| オプション色 | - |
| シート列数 | 1 |
| 乗車定員 | 2名 |
| ミッション 位置 |
コラム |
| マニュアル モード |
◯ |
| 最小回転半径 | -m |
| 全長×全幅× 全高 |
4.67m×1.97m×1.22m |
| ホイール ベース |
2.7m |
| 前トレッド/ 後トレッド |
1.68m/1.65m |
| 室内(全長×全幅×全高) | -m×-m×-m |
| 車両重量 | 1500kg |
| 最大積載量 | -kg |
| 車両総重量 | -kg |
| 最低地上高 | -m |
| 掲載用コメント | ※諸元・装備情報は一部本国仕様の情報を掲載しております |
| エンジン型式 | - | 環境対策エンジン | - |
|---|---|---|---|
| 種類 | V型6気筒DOHC | 使用燃料 | ハイオク |
| 過給器 | ターボ | 燃料タンク容量 | 60リットル |
| 可変気筒装置 | - | 燃費(10.15モード) | -km/L |
| 総排気量 | 3000cc | 燃費(WLTCモード) | - |
| 燃費基準達成 | - | ||
| 最高出力 | 630ps | 最大トルク/回転数 n・m(kg・m)/rpm |
730(74.4)/5500 |
| エンジン型式 | - |
|---|---|
| 種類 | V型6気筒DOHC |
| 過給器 | ターボ |
| 可変気筒装置 | - |
| 総排気量 | 3000cc |
| 最高出力 | 630ps |
| 最大トルク/ 回転数n・m(kg・m)/rpm |
730(74.4)/5500 |
| 環境対策エンジン | - |
| 使用燃料 | ハイオク |
| 燃料タンク容量 | 60リットル |
| 燃費(10.15モード) | -km/L |
| 燃費(WLTCモード) | -km/L |
| 燃費基準達成 | - |
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