スズキアルトラパンは制約のなかの優れもの 【試乗by西川淳】
2009/02/02
超実用車なのに遊び心もちゃんと盛り込んできた
軽自動車は、超のつく実用車。だから燃費ももっとがんばってもらいたいし、いつまでも生活者の味方でいてほしい。その一方で、あまりに車として完成度が高くなりすぎると、逆に厄介なことになりやしないかと心配。だって、そもそも軽自動車って、小型乗用車に比べて何かを我慢したり妥協しなきゃいけないから、税制とか優遇されているわけで…。
これだけデキが良くなってくると、どうしても不公平感って出てくる。ワゴンRなんてすごいもんね。縛り=軽規格そのものも、良し悪しだな。規制があったからここまで進化できた(実に日本的で素晴らしい)とも言えるし、軽の規格に縛られているうちは世界に通用するミニカーを作れない気もするし。難しいよね。まあ、いまは内需拡大、日本オリジナルな車であればいいとは思う。将来的には軽のユーザーがごっそり電気自動車に乗り替えるかも、だし。
それはさておき、ラパン。実用の軽だからこそ、遊び心って必要だと思う。ボクはこういうの、割と好きです、実は。ヤンママ向きの強面仕様もいいけど、微笑ましいくらいにほっこり温かい雰囲気って、軽に似合うと思うんだよなあ。で、やるからには徹底的に貫き通してほしいな、と。中途半端に可愛くするから“しょっぱく"見えるんであって、やり抜けばファンも増える。そういう意味では新型ラパン、けっこうやり抜いてる。だから、第一印象がいい。
専用インパネ、よくできている。バブル期の日産パイクカーを思い出した。ちょっと前のスズキ車じゃ考えられない。オーディオ回りのデザインなんか、ホント、恐れ入りましただもの。カラードの明るい内装がやっぱりいいな。ターボで選べないのが残念。黒しかないんだよね、ターボには。変じゃない?
シートもいい。広さや空間的なことはもちろん、感触や座り心地がいい。色合いやデザインもいい。センスが良くなってきた。ヒップポイントも高くなって、運転もしやすい。室内で不満は、ハンドルとシフトレバーかな。周りのデキがあまりに良すぎて、完全に浮いてしまっている。日常的に触る(当たり前だね)ところだけに、もうひと工夫ほしかった、なんて言うのは贅沢すぎるかな。それこそ、軽なんだしねえ。
走りはといえば、ワゴンR由来のものだけに、ほとんど文句なし。というか、ホイールベースがワゴンRより40mm長いぶん、街中でもしっとりしているし、リアタイヤの動きや反応も自然。ワゴンRで気になった、タウンユースの乗り心地の悪さもほぼ気にならないレベルに。ただ、パワーステアリングの初期応答に若干、違和感があった。
エンジンは、そりゃターボであるにこしたことはないけれど、NAでも不満なし。燃費を考えるとCVTを選びたい。昔のように、音だけ盛大で前に進まない、なんてことないからね。個人的には、やっぱりウサギらしく時にはすばやく走りたいのでターボが欲しいところだけど、そうすると2トーンカラー(Xのみ)もカラフル内装も選べない。やっぱり買うならXかな、なんて四十過ぎのおっさんに思わせるあたりが、もう凄いっしょ?
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