M・ベンツSL&AMGモデルビッグマイナーチェンジ 【試乗by西川淳】
カテゴリー: メルセデス・ベンツの試乗レポート
2008/07/02
よりアグレッシブな顔つきで新鮮味を取り戻した
デビューから早6年。その魅力のほどはいまだ健在だが、ここ数年の高性能車ブームも相まって、スペシャリティカーとしての鮮度にはさすがに陰りが見えてきた。それでビッグマイナーチェンジがSLに施されたのだろう。オフィシャル写真を初めて見たとき、思わずこう叫んでいた。「今のうちに、丸眼を買ったほうがいいかも!」。
写真で見る新しい顔つきは、かなりアメリカ車ライク(例えば最近のキャデラックテイストの影響など)に見えたし、その大掛かりな変更がいかにも取って付けたような感じで全体のデザインバランス( 現行型SLのスタイリングは歴史に残るスポーツカーデザインだと思う)を崩しているようにも思えたものだった。ところが実際目の前にしてみると、SLが以前よりワイド&ローにみえて格好いい。初代SLのモチーフがそこかしこに散見されるのも、車好きにはたまらない。グリルやフードバルジ、サイドエアベントが効いている。
われわれに供されたのはSL350、SL550、SL600といういわゆるノーマルラインナップ。もう1台、SL280という廉価グレードが今回のマイチェンで追加されたが、日本への導入予定は今のところない。SL550とSL600のパワートレインはキャリーオーバー。まずはSL600でスタートした。相変わらず豪勢な乗り味だ。決してスポーツカーではない。どでかいクッションに身を任せたかのような(決してふわふわではないが)、意のままに動くクルーザーに乗っているかのような、そんな気分だ。
ひとたびアクセルペダルを乱暴に踏み込めば、太いタイヤがすぐに悲鳴を上げてお尻が豪快に振れる。6LのV12を2個のタービンでスーパーチャージしているのだから、そのパワフルさは伊達じゃない。ABC(アクティブ・ボディ・コントロール)もさらに進化している。さすがに鼻先が重いが、だらしなく乱れるということがない。圧倒的なパワー。5速ATで十分。
今回のマイナーチェンジにおける技術的な注目点をいくつか挙げておこう。SL350用のニューV6エンジン、SLK以来のエアスカーフ、そしてダイレクトステアシステム。これまでSLクラスの6気筒モデルといえば、ノーズが軽く走りのバランスはすこぶる良かったが、いかんせんパワー不足の感が否めなかった。最新型は違う。高回転型の新3.5LのV6を積むことでパワー&トルクが大幅にアップした。と同時に、ブリップ機能付き7Gトロニックを組み合わせることで燃費性能を引き上げることにも成功している。オープンにしてワインディングへと飛び出した。即座に、これは買いだ!と知る。ハンドリングバランスの良さはそのままに、胸をすくパワーフィールを得た。ひらりひらりとワインディングを駆けぬける。ブリッピング付きのシフトダウンも気持ちいい。スポーツカーとしても楽しめる6発SLクラスがようやく誕生だ。そういえば、SLクラスのオリジンは6気筒である。
2日目はいよいよSL63とSL65という両頂上オープンカー、キング・オブ・キングスの乗り比べである。まずはSL63AMGから。ようやくSLにも63ユニットが積まれた。6.2LのV8自然吸気エンジンは、AMGメルセデス社が初めてブロックから自社で開発したエンジンである(これまではあくまでもメルセデスユニットの改造版であった)。フラットトルクで高回転型。スーパーチャージャー55ユニットほどのわかりやすい爆発力はないが、非常にマニアックなエンジンフィールを見せる。ボクは好きだ。
新型SL63にはもう一つ、ニュースがある。ついにメルセデスにも2ペダルロボタイズドミッションが積まれた。その名もAMGスピードシフトMCT(マルチクラッチテクノロジー)。名前を見てツインクラッチの類だと報じたニュースもあったが、実はシングルクラッチのシステム。7Gトロニックのギアボックスをそのまま使い、トルコン部分に多板湿式クラッチを据える。これを油圧で精密にコントロールすることで、トルコン並みの扱いやすさと、クラッチ付きならではのダイレクトな変速を両立させた。
半信半疑で乗ってみると4つある変速モード(C、S、S+、M)のうち、オートマチックのC(コンフォート)を選んでいるかぎり、不快なショックがほとんどない。シフトアップ時や微速域でもほとんど違和感がない。その分、変速そのものはマイルド。ひとたびS(スポーツ)モード、もしくはS+モードを選べば、オートマチックでも相当にスポーティな走りが楽しめる。3段落ちのシフトダウンも可能。その一体感たるや尋常じゃない。これはもう、リアルスポーツカーの領域だ。ちなみにローンチコントロールも備わっている。
最後の車、SL65AMGを試す。パワートレインはこれまでと同じ。ABCの制御など、マイナーな変更はされているはず。63に負けてはならじ、とぶっ飛ばす。さすがにオーバー600ps&1000N・mの迫力は、心臓が口から飛び出すんじゃないかと思うほどに爆発的なもの。容易には操れないパワーをテクノロジーで抑え込む。その技術力証明のために、この車が存在するかのようだ。とにかく、すさまじい。それでいて、快適でもある。SLRマクラーレンじゃなくてもいいんじゃないか。
もっともこれだって3000万円級だと言うが。
ライバルの車たち
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