新型トヨタiQは本気のシティコミューター 【試乗by西川淳】
2009/04/21
チョロQを実車化したかのような走りは、新しい
まるで自動車主要メカニズムの “知恵の輪”のような車だ。全長3mといういわゆるスマートサイズに、大人3+子供1の計4人乗りスペースを稼いだFF車を作るという発想は、複雑な寄せ木細工のようなものだったに違いない。車が小さくなることは軽くなることだから、絶対的に善である。軽量化が車の最重要課題であることは論を待たない。だからこの際、思い切り小さい車を、固定観念を捨てて作ってしまえ、というのがiQだった。ちなみに2008−2009日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞車でもある。
工夫=エンジニアの努力の結晶、は至るところにある。フロントギアボックス搭載位置の変更、ステアリングギアボックスの仕組み変更、燃料タンクの薄型化、エアコンユニットの小型化、薄型シート、非対称ダッシュボード、などなど。文字どおり、mm単位のせめぎ合いで不可能を可能にしたパッケージが生まれている。今後、トヨタはこれをベースに小さくて効率のいいパッケージをいろいろ生み出すはず。そちらの方が興味深い。メカニズムのスペックで語ると、何てことないFFコンパクトカーである。フロントに1L直3エンジンを積み、CVT(無段変速)を組み合わせた。グレードは100X、100Gの2種類。
エントリーグレードにあたる100Xにも、エアコンや9つのエアバッグ、VSC(横滑り防止)といった重要な装備はほとんど標準で装備されるが、100Gにはスマートキーやオートエアコン、レザーハンドル&シフトノブ、室内メッキ加飾、などが追加される。さらにパッケージオプションとして、豪華な100Gレザーパッケージも用意。ただし全車、ナビゲーションは別売。最も安くて機能もシンプルなDVDナビでも15万円以上してしまう。
見たこともない前後横比のバランスに、誰もが最初は目を疑うはずだ。真正面から見ると、ちょっとしたミニバンくらいにも見える。幅がけっこうあるのだ。回り込むと、いきなり小さい。本当に小さい。全長3mといえば、大型サルーンのホイールベースといってもいい。これまでの常識では、4人乗りを実現するためには全長3.4mは必要だった。マイナス40cmの概念破壊。確かに、それだけの存在感をもっている。乗って気づくのは、ほぼ車の真ん中に座っているということ。これって動く物に乗る場合、とても重要。乗り物って、シンプルになればなるほど人は真ん中だ。そのほうが、いろんな意味で操作しやすいし、物理的なバランスもいい。
さすがに短い車だけあって、ふんわりしなやかに街を流す、というわけにはいかない。けっこうコツンコツンと跳ねる。跳ねるけれども、車そのものが乗り手の腰を中心に動いている感覚があるので、それほど不快ではない。むしろ、楽しい。これまでとは違う価値観の物差しで、ライドフィールもとらえたほうが楽しめそう。街中を行くぶんにはそれほど気にならないが、ビュンと加速したいときや追い越し時などには不満がある。せめてマニュアルギアボックスがあれば、と思うのは人間が古い証拠だろうか。高速巡航も、やはり得意とは言えない。シティカーとして割り切る車である。駐車スペースに苦労しないことを、まずは喜んでいい。とにかく、都会では想像以上の機動力を発揮する。これに馴染むと、ほかの車がうすらデカく思えて大変だ。
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