サンバーの中身を積んだフィアット 500で、毎日がレッドカーペット気分です
2018/04/28
車は単なる移動の道具ではなく、大切な人たちとの時間や自分の可能性を広げ、人生をより豊かにしてくれるもの。車の数だけ、車を囲むオーナーのドラマも存在する。この連載では、そんなオーナーたちが過ごす愛車との時間をご紹介。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?

映画『グラン・ブルー』のエンゾに憧れて
JR渋谷駅からそう遠くない場所にある「岸田歯科診療所」。それはひたすら瀟洒(しょうしゃ)にしてお洒落な建築物で、南欧のどこかにありそうなセレブリティの別荘を連想させる。
そんな開業歯科医の愛車といえば、一般的にはメルセデスやBMW、あるいはアストンマーティンやらフェラーリやらである場合が多い。
だが岸田歯科診療所の入り口前に駐車されている車は、古くて小さなフィアット 500。
や、正確に言えばそれは純粋なフィアット500ではないのだが、その点については後述する。いずれにせよ、開業歯科医の愛車としては一般的でない、ごく小さな車が、そこにある。

そもそものきっかけは、青年時代に見た1本の映画だった。
1988年に公開された『グラン・ブルー』のなかで、ジャン・レノ演じる「エンゾ」が乗っていたのがボロボロのフィアット 500。その得も言われぬカッコ良さに、若き日の岸田さんはシビれた。そしていつの日か絶対、あの車に乗ると決意した。
だが、時は流れて歯科医となった岸田さんに、周囲の者が忠告する。
「あんなの買っても壊れて苦労するだけだよ」と。
そして岸田さんも「そういうものかぁ」と思い、メルセデスやBMWなどの普通に歯医者さんっぽい車に乗る日々を送った。
しかしどうにもドイツ製高級車にはなじめず、サーブ 9-3カブリオレを経て各種のイタリア車やフランス車を愛好するようになっていた4年前、このフィアット 500と出会った。
正確にはフィアット 500ではなく「フィアット 500 マキナ」。その中身は、実はスバル サンバーである。

ボディはフィアット 500。だがエンジンなどはスバル サンバー!
フィアット 500 マキナとは、山形県にある「チンクエチェント博物館」と大手自動車用品店の共同企画により、ごく少数が制作されたリフレッシュカー。
ボディは往年のフィアット 500だが、エンジンとトランスミッション、そして内装類と足回りは、同じRRレイアウトであるスバル サンバーのそれが完全移植されている。

主に奥さま用として「何か小さくてオートマの車」を探していた4年前、イタリア車好きの友人からこのマキナの存在を教えられた。さっそく見に行き、一目ぼれした岸田さん。
当時保管されていた方の愛情は深く、「どこでどう保管する予定なのか?」「もちろん雨ざらしではないでしょうね?」などの厳しい面接(?)をクリアしたのち、ついにフィアット 500 マキナを手に入れた。
運転してみたそれは、思ったとおり最高だった。
限りなくコンパクトなサイズゆえ、マツダ ロードスターの「人馬一体」すらも超える究極の人馬一体感。フロントの三角窓から入ってくるそよ風。
それまでにも様々な車に乗ってきた岸田さんだったが、こんなにもダイレクトで楽しい車は他になかったという。

この車に乗れば、すべての時間が「映画のワンシーン」に
そしてフィアット 500 マキナは「見られる車」でもある。
主に外国の方が多いということだが、信号待ちの状態から発進しようとすると、通りがかりの青年から「Stop ! ......(PASHA) Thanks !(止まって!〈パシャっと写真を撮って〉ありがと!)」などと言われたり、見知らぬ人から「Wow !」とハイタッチを求められたり。
高速道路でもそうだ。アクセル全開にすれば100km/h以上で走ることも可能だが、もちろんそんな野暮な真似はせず、いちばん左の車線を70~80km/hぐらいでトコトコ走る。
すると、右側車線を追い抜いていく車の乗員からずっと手を振られ続けたり、なかにはあえて岸田さんの後ろについて一緒にのんびり走り、楽しそうな顔でずっとマキナの後ろ姿を眺め続ける人もいるという。
あまりにも注目されるため、この車に乗っているときはまるで「レッドカーペット」の上を歩いているかのようだと、岸田さんは言う。
そして映画のワンシーン、大好きな『グラン・ブルー』の世界に入り込んだような気分になるとも。
もちろん、注目されているのは自分でなく車であることはわかっている。奥さまからも「くれぐれもそこは勘違いしないようにね(笑)」と念を押されている。
実はもう1台、プジョー 308GTiも持っているが、それは箱根などに走りに行きたくなったら乗るだけで、普段の買い物や用事は、すべてこのフィアット 500 マキナで行くそうだ。
とにかく、この小さな車は一生手放さない。
この先、万が一、何らかの理由で大破してしまったならば仕方ないが、基本的には何があってもしっかり直して再び乗る。
そう決意するほど、岸田さんはこの車と、この車で過ごす時間を愛している。

どんなクルマと、どんな時間を?
フィアット 500 マキナと、レッドカーペットを歩いているような時間を。
1957年に発売、以後1977年まで20年間の長期に渡り生産された4人乗りの小型自動車。イタリア本国やヨーロッパに留まらず、世界各国に熱心なファンが存在しており、レストアして愛用する者も多い。このマキナもそのひとつで、スバル サンバーの部品を積み替えている。


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