人生初の愛車は、いすゞ ピアッツァ。憧れの一台とスタートした若きデザイナーのカーライフ
2021/04/22

車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
惚れたモデルはレアな旧車
デザイン界の巨匠ジョルジェット・ジウジアーロが、外観から内装まできっちり手掛けたプロトタイプをほぼそのまま市販化した、いすゞ ピアッツァ。言わずと知れた名車である。と同時に、「30年前の」「いすゞの」「クーペ」……まごうことなき珍車である。
これに乗るのが23歳の若者で、しかも初めての愛車だというから、いったいどんな変わった人だろうと訪ねると、ピアッツァのオーナーである後藤さんは、意外なことに至極まっとうでイマドキな若者だった。
子供の頃からの車好きで、カーデザイナーを志し、今は空間デザインを手掛けるデザイナーである後藤さんは、ずっとジウジアーロデザインの車に憧れていたという。
ピアッツァの好きなところを問うと、前後に絞られた楔型のサイドビューを挙げつつ、「どこから見ても、工業製品としての使い勝手も含めて、デザイン的に破綻がないっていうのはすごい。プロダクトデザインとはピアッツァですって言えるくらい」と感嘆しきりだ。
「よく『なんでこの車に?』って聞かれるんですけど、かっこいいな、乗りたいなって思う憧れの車を手に入れた……それだけなんです。ただちょっとへそ曲がりなところがあるので、みんなと同じじゃないのがいいっていうのはありましたけど」と笑う。

「就職したので、ピアッツァ探してください」
「初めての車だし、とことん好きなものを」と心に決めて選んだピアッツァだが、そうそう流通しているものでもない。
学生時代にネットでシルバーのピアッツァを見つけ、現車確認しに駆け付けたこともあったそうだが、就活前という時期だったのでローンのことも考えていったんはがまん。就職が決まるまでは「見つけちゃったらつらいんで」探さないようにして過ごしたという。
そして、新年度の4月に無事就職し、5月にはいすゞ車の旧車を扱うショップに「就職したので、ピアッツァ探してください」と電話をかけた。くだんのシルバーのピアッツァを見に行った際、営業担当者の名刺をもらっていたのだそうだ。
まっすぐな若者の熱意は販売店にも伝わったのだろう。「お店の人も熱心に探してくれて」8月に動きがありそうと連絡があり、9月には念願の現車確認となった。
ほぼオリジナルの状態が保たれた美しいピアッツァは、第一条件だったMTであることはもちろん、ツインカムNAエンジン、デジタルメーターという「ピアッツァのいいところがすべて詰まった車」だった。2日間で屋根付きのガレージを探した。






「僕は6人目のオーナーなんですけど、ダッシュボードの反りもないし、たぶんずっと屋内に置かれていたようなので。さすがに雨ざらしにするわけにはいかないじゃないですか。この車見ちゃったら、バチが当たりそうで、下手にいじったりもしたくなくなりました」
古い車を大切に扱いつつも、神経質になりすぎないように、なるべく普通に乗るようにはしているという。
一番お気に入りのドライブコースは三浦半島をぐるっと海沿いに走る国道134号だし、キャンプにも行き、夏場に名古屋のトヨタ博物館まで2日間で1000km弱のドライブもしたし、今後はサーフィンにも行ってみたいという。
「だって初めての車ですよ。乗りたくてしょうがない!」
すっかり通い慣れた、海沿いのドライブコース途中のカフェには、車好きの仲間が集う。

「納車されて初めてここに来たら、一瞬で囲まれたんですよ(笑)。信号待ちで隣の車から声かけられたりもして、この車のおかげで新しい出会いも広がって。そこまでの車なんだなって驚きましたね」
年長の仲間たちとその愛車に囲まれながら、後藤さんは屈託がない。たしかにピアッツァの魅力もある。でも、好きな車に乗るまっすぐな若者には、人を惹きつけ、人をつなぐ魅力があるということには、どうやらまだ気づいていないらしい。


後藤和樹さんのマイカーレビュー
いすゞ ピアッツァ(初代)
●年式/1983年式
●グレード/XE
●購入金額/170万円
●走行距離/正確には不明
●マイカーの好きなところ/ハンドルを握るだけで、自分は勿論周りの人も笑顔にしてしまうところ。
●マイカーの愛すべきダメなところ/限界寸前で寄ったコンビニやSAで、すぐおじさまたちに囲まれてしまうのでなかなかトイレに行かせて貰えなくなるところ(笑)
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/普段使いできるデザイナーズ旧車に乗ってみたいと思う変態さんへオススメです笑

自動車ライター
竹井あきら
自動車専門誌『NAVI』編集記者を経て独立。雑誌や広告などの編集・執筆・企画を手がける。プジョー 306カブリオレを手放してから次期愛車を物色しつつ、近年は1馬力(乗馬)に夢中。
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