’65 VANDEN PLAS 4LITRE R
カテゴリー: クルマ
タグ: EDGEが効いている / VINTAGE EDGE
2014/01/09

高級車は派手さが前面的に出てはダメなんだよ
大型セダンのオースチンA99をベースにし、3Lと4Lモデルを発売。その後ロールスロイス製直列6気筒エンジンを積んだ「4リッターR」が生産される。ロールスロイスのエンジンが他社の車に積まれるのはこれが最初のこと。また、内装の仕立てもロールスロイス社から「品質を下げないように」と注文が入り、同社の匂いを感じさせるウォールナット・ウッドなどが使われた。
徳大寺 取材を進める前にひと言言っておかなければならないな。君もよく知っている方だけど、我々の大先輩である小林彰太郎さんが亡くなられただろう。今日の自動車社会への貢献は計り知れないし、我々がこうしてモータージャーナリストとしてやっていけるのも小林さんのおかげなんだ。ご冥福をお祈りしたい。
松本 はい。本当に残念ですね。
徳大寺 では本題に移ろう。今回は何を見に?
松本 今回は“ハイパワー”特集ということでいろいろ考えた結果、少しひねりを利かせたモデルにしました。実は亡くなられた小林彰太郎さんというと、僕はこの車を思い出すんです。初めて隣に乗せてもらった時に「昔の材料は簡素ですね」と言ったら「本当に良質な素材をもっと勉強するべきだ!」って怒られたんです(笑)
徳大寺 そうか、君にもそんな思い出があったんだな。でも、それだけのヒントでは、さすがに難しいよ。もう少し教えてくれないか? 例えば、どこの国か、キャパシティとか。作っている国は小林さんの話で分かったけどな。
松本 はい、巨匠がお好きなイギリス車です。ブランドはフォードが持っていて、スポーツカーでもありません。最大のヒントは一部分だけ弩級の高級車のエンジンが載っていることですかね。
徳大寺 最後のひと言でわかったよ! イギリスで弩級の高級車はいくつかあるけど、スポーツカーじゃなくて早い話がサルーンというわけだろう。量産ということを考えると搭載している弩級の心臓部、即ち、エンジンはロールスだな。
松本 さすがですね。その通りです。巨匠がリアルタイムで過ごしたモデルは参考書で学んだ僕とは知識の深さが違いますね。
徳大寺 そりゃ、当時の背景を捉えながら自動車文化を見続けているんだからな。さて、ロールスのエンジンを搭載していて、現在は製造していない自動車メーカーといえば、それはヴァンプラだろうな。日本ではヴァンプラというと、コードナンバーADO16というFFベースのミニのパワーユニットを搭載した“ヴァンデン・プラ・プリンセス”を思う人も多い。でもそれはある一車種でしかなく、あくまでヴァンプラという名前は省略してあるに過ぎないんだ。
松本 そのなかでロールスのエンジンを搭載したのが“ヴァンデン・プラ4リッター R”なんですよね。
徳大寺 やっぱりその車か。ロールスのFヘッドという特殊なバルブレイアウトを採用している車だね。
松本 そうです。燃焼状態を最良にしてノッキングを減らし、安定した燃焼状態にするのを目的に作られたそうですね。
徳大寺 ヴァンプラに搭載された4Lエンジンは確かにロールスが作っていたけど、本家に搭載していたのは4.2L版だ。ヴァンプラには少しキャパシティダウンして搭載したわけだな。
松本 そろそろ到着ですよ。僕は実物を見るのは初めてです。
徳大寺 僕は当時新車で見てるんだけど、確か1964年ぐらいだったかな。お! あれか。ガレージにあるバリトーンの。かなりキレイだぞ。
松本 近くで見ましょう。これはなかなかの雰囲気にレストアされていますね。過剰じゃなくてという意味で。しかしキレイだな。内装も張りのあるアーモンドグリーンのシート生地で抜群ですね。ウォールナットのメータークラスターもバッチリです。エンジンルームを見てみましょう。おーこのエンジンってオールアルミブロックなんだ。ロールスのマークが輝いていますね。当時は30万㎞までオーバーホール不要と言われたそうですからね。
徳大寺 うーん、これはキレイだな。でも一つ付け加えると今の世の中には合っているんだろうけど、このバリトーンは当時を知っている僕から言わせると明るいな(笑)。君からするとバッチリ英国車しているわけだよな。
松本 ええ。イイ感じですね。僕は好きですね。このスタイリングってピニンファリーナっぽいですけど、どうなんですか?
徳大寺 ヴァンプラや同系統の当時のオースチンはピニンファリーナなんだ。オリジナルのスケッチよりも英国らしくぼてっとしてるんだろう(笑)。だからバランスはいいはずだぞ。本当に高級なモデルは派手さが前面的に出ては台無しなんだ。このくらい爪を隠す雰囲気も今の高級車にもあるといいと思うな。「いかにも!」なんていうモノは英国では野暮なんだ。




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