ランチアが生み出した 美しいスクエアデザイン ’95 ランチア デルタ HF インテグラーレ エボルツィオーネⅡ
カテゴリー: クルマ
タグ: EDGEが効いている / VINTAGE EDGE
2014/12/17
※徳大寺有恒氏は2014年11月7日に他界されました。自動車業界へ多大な貢献をされた氏の功績を記録し、その知見を後世に伝えるべく、この記事は、約5年にわたり氏に監修いただいた連載「VINTAGE EDGE」をWEB用に再構成し掲載したものです。

フェンダー一つをとってもランチアらしい上品さが潜む
徳大寺 今日のヴィンテージエッジは今年最初じゃないか。今年もよろしくお願いします。年に12回のこのコーナーなんだけど、その1台に限らずたくさんのモデルを見ることができて、こんな楽しい連載はないよ。
松本 こちらこそ、旧年中はお世話になりました。誌面では紹介できなかった魅力的なヴィンテージカーがたくさんありましたね。そこで、いまだ取り上げられていないモデルを今回はフィーチャーしようと思ってるんですよ。
徳大寺 ほう。ものはなんだい? 50年代、60年代にも良いモデルは沢山あるけど、これからヴィンテージカーに育つに相応しいモデルを取り上げるのも我々の役目の一つだからな。
松本 そうですね。今年初のヴィンテージエッジはランチアデルタインテグラーレです。
徳大寺 そりゃいいよ! あの車は間違いなく記憶に残るモデルになる。君はランチアデルタは比較的新しいモデルと思うかもしれないけど、登場したのは1979年のフランクフルトショーだからね。もう結構昔だぞ。ランチアデルタはランチアがフィアット傘下に入ってからフィアットが主導権を握って作られたモデルなんだ。ジウジアーロをデザインに採用した点もランチアとしては新しかったんじゃないかな。ランチアはデザインにうるさいからな。
松本 そう考えるとランチアは凄いですね。今日我々が見に行くインテグラーレは1995年式ですから継続的なデザインの重要性が分かります。通常のモデルサイクルは7年から長くて10年ですけど、デルタは1995年まで基本は変わってないですから。そうした意味では際立ったプロポーションではないですけど、実用的なスタイリングのジウジアーロを起用したのは正解だったわけですね。今見ても古くならない。まさにヴィンテージ予備軍と呼ぶに相応しいモデルです。
徳大寺 この車両か。この色はいいな。
松本 状態も非常に良いようですね。
ランチアが生み出した美しいスクエアデザイン
徳大寺 このデルタはフィアット リトモと同じプラットフォームだけど、デザインはともかくドアを閉めた感じや内装の色使い、ボディ色に至るまで、上品に仕上げられている。これはフィアットではできないことだからね。
松本 ランチア独特の雰囲気の一つにアルカンターラを使うことがありますけど、僕が購入しようと思ったデルタHFはシートがレカロでしかもアルカンターラでした。もう一つ驚いたのはイタリアのテキスタイルデザインで有名なミッソーニのデザイン柄が使われていたんですよ。
徳大寺 ところで、HFの意味は知ってるかい。High-Fidelityすなわちハイ・ファイの意匠なんだ。高い忠実度というランチアのスポーティなモデルにネーミングされたんだけど、当時から品位が感じられて、なんとも洒落ているなと思ったもんよ。そう思って運転するだけで士気が高揚する。
松本 デルタHF 4WDからWRCのグループAで勝つためにブリスターフェンダーを付けてインテグラーレとしたじゃないですか。あの盛ったフェンダーも魅力的ですよね。あのブリスターフェンダーがジウジアーロのデザインしたデルタの品格を損なうことなく、さらに進化したデザインに移行しているのはデザイン力の賜物ですね。
徳大寺 それはそうなんだけど、ランチアは装飾的なモノは嫌がると思うな。実戦的であるものにのみ採用する姿勢が技術と上品さを醸し出しているんじゃないか。ブリスターフェンダーにしてもサスペンションストロークを増やし、さらにトレッドを増すことによって安定感を増すという目的があった。本物のモディファイとはこういう隙のないものなんじゃないかな。
松本 本当にそう思いますね。「インテグラーレ」とは、これで完結というような意味でしょうから、すべてやり尽くしたデルタということですね。確かにネーミングが洒落ていますよ。
徳大寺 彼らは、どういうものがカッコイイかよく知ってるんだ。デルタはさぁ、ヘッドライトが四角の異形ライトだっただろう、それを丸形に変えたんだ。丸型の方が明るいししかもカッコイイ。それと丸型にしてヘッドライトの隙間も無駄なくメッシュの編み目にしてるだろ。あれが日本の好き者にはたまらないんだと思うよ。無骨だけどセンスがイイんだよ。もう、ウンチクで話は尽きないな。今から所有しても決して遅くはないし古くもならない。ここ20年にあるかないかの1台だと思うな。





【SPECIFICATIONS】
■全長×全幅×全高:3900×1770×1365mm
■車両重量:1350kg ■ホイールベース:2480mm
■エンジン種類:L4 DOHC ■総排気量:2000cc
■最高出力:210ps ■最高トルク:31.0kgm
【コレツィオーネ】
■所在地:東京都世田谷区等々力7-2-32
■定休日:火曜日
■営業時間:10:00-20:00
■tel:03-5758-7007
【関連リンク】
※カーセンサーEDGE 2014年3月号(2014年1月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
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