20代の若者が磨き上げた、令和のいすゞ ピアッツァネロ(初代)
2025/08/20

車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
車好きなら素通りできない! あまりに美麗なピアッツァ
年式的には「旧車」ということになるのだろうが、平成を超えて令和になった今見ても、ピアッツァのスタイリングは相変わらず新鮮である。といっても、カウンタックのように視線を一点に集める破壊的な存在感とは違う。時とともに風景が変わろうとも、この車は常に周囲と調和する普遍性が魅力なのだ。
このピアッツァネロを所有する大村さんは現在28歳。いすゞが乗用車の自主生産から撤退した1993年より後の生まれである。
ピアッツァはカーデザインの巨星・ジウジアーロが手がけたスポーツクーペ。大村さんの愛車は2Lターボエンジンを搭載する89年式の「ハンドリングバイロータス」だ。金色のストライプが入ったネイビーの車体色は、とくに希少なものらしい。

こういうモダンなデザインの車がサビなどでボロボロになっていると、その形状とのギャップで何とも悲しい風情になったりするものだが、大村さんの愛車は約35年前という年式を考慮すれば、信じられないほど綺麗である。
もし街中で止まっているのを目にしたら、大抵の人は素通りできないだろう。

デザインに魅了され、初の愛車として購入
「車好きは父の影響です。ただ、ピアッツァみたいな古くてマニアックな車に関しては、それほど関心は高くなかったと思います。そもそも、いすゞが乗用車を作っていたことすら知りませんでしたから」
そんな大村さんがピアッツァを知ったのは、今から約6年前のこと。ある旧車紹介のYouTube動画がきっかけだったという。
「旧車といえば角ばった車というイメージを抱いていたので、ピアッツァの直線でありながらもどこか曲線的なデザインに衝撃を受けたんです。とくに横から見たときのシルエットですよね。あの時代の車とも現代の車とも異なる美しさに魅了され、ピアッツァについて自分でもいろいろ調べるようになりました」

ここでは割愛するが、ピアッツァという車は、その誕生ヒストリーも大変興味深いモデルである。「ジョルジェット・ジウジアーロ」や「アッソ・デ・フィオーリ」といったキーワードとともに広がる豊かな奥行きが、大村さんの興味をさらに引きつけた。
必然的にピアッツァの前身である「117クーペ」の存在も知ることになったが、年式や装備だけで比較すれば現代的な車に近い感覚で乗れそうなピアッツァ、それも装備が充実した130型に絞って購入を検討することになった。
「これぞという物件を常に中古車情報でチェックしていたんですが、結局今の愛車と出合うまでに2年かかりました。なかなか好物件が出ず、旧車を諦めて年式の新しいVW ゴルフやシロッコ、メルセデス・ベンツ Aクラスにしようかなとも思ったのですが、それなりの大金を払って買うには、もう一歩引きつけられるものがなくて」
大村さんのピアッツァネロは、旧車を得意とする東北のショップで販売されていた個体だという。希少なフルノーマル。ハンドリングバイロータスに純正装着されたBBSのアルミメッシュホイールはもちろん、カセットテープ・カーオーディオまで純正のままである。ピアッツァの購入について、父も応援してくれ、一緒に新幹線で現車確認へ出向いたという。そして、その場で即決した。


しっかりとしたケアで本来の性能をキープ
現代の車にはないデザインに魅了されて購入したピアッツァネロだが、故障や部品の供給など、旧車を維持するうえで必ず直面するであろうトラブルに対する不安はあった、と大村さんは語る。だが、実際に所有してみると、大きな不調はなく、むしろ優れた走行性能に感銘を受けた。
「スタイリングが注目されがちなピアッツァですけど、走りも現在の交通環境でまったく不満を感じさせないくらい洗練されていて驚きました。普段からレンタカーなどで最近の車に乗る機会はあるのですが、走行性能に限っては遜色ないと思います」

このように本来の性能を堪能できているのは、大村さんが購入後にしっかりと機関に手を入れているからでもある。メンテナンスは信頼できるショップに一任しており、SNSやオーナーズクラブで得た情報をもとに、点火系や冷却系、足回りのブッシュなどはひと通りリフレッシュしたという。
経年劣化でクラックが入った内装トリムもしっかり修復されており、本当に大事にしているのだなと感心してしまった。所有して4年間で一度だけ、路上でエンジンがストップしたことがあったが、それ以外はこれといった故障は発生していないそうだ。


週末に1人でドライブするのが、大村さんの主な楽しみ方である。早朝の首都高をゆったり流すのが至福の時間だ。
「街で信号待ちをしていると、通りすがりの人から突然『いいね!』ってサムアップされることもあるんですよ。世代を超えてつながれるのがうれしいですね」
車をきっかけに当時のカルチャー全体に興味が広がる
愛車との暮らしは、大村さんの嗜好にもわずかな変化をもたらした。
「もともと古着とか買うタイプではなかったんですけど、この車をきっかけに当時のファッションとか音楽とか、80年代のカルチャー全般に興味を持つようになりましたね。当時は僕と同じ世代がこういう服でピアッツァに乗ったりしていたんだろうか、とかイメージするのが楽しくて」
今後の目標は、経年劣化が進んできた純正マフラーの交換だという。昭和の名車は令和の若者にしっかり引き継がれ、今も色あせることなく日本の路上を走っている。


▼検索条件
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大村さんのマイカーレビュー
いすゞ ピアッツァネロ(初代)
●購入金額:約180万円
●走行距離:約17万5000km。購入時は約16万km
●マイカーの好きなところ:見るたびに惚れ惚れする唯一無二のデザイン。内装やスイッチ類も使いやすく快適なところ
●マイカーの愛すべきダメなところ:強いて挙げるなら、燃料計の調子が悪く針が動かないところ(笑)でもホントにそれくらいです
●どんな人にオススメ?:一目見てビビっときた人。このクルマを大切にしたいと思える人に

ライター
佐藤旅宇
オートバイ専門誌と自転車専門誌の編集記者を経て2010年よりフリーライターとして独立。様々なジャンルの広告&メディアで節操なく活動中。現在の愛車はフォルクスワーゲン クロスポロと日産 ラルゴの他、バイク(トライアンフ)とたくさんの自転車。
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