輸入車あるある? “天井落ち”ってなぜ起きる? どう直す? 修復専門店に聞いてみた【前編】
2025/09/23

車の天井が垂れてきた
ある日突然、愛車の天井の内張が剥がれて垂れてくる!?
ちょっと古い輸入車乗りの間ではわりとメジャーな(?)、いわゆる「天井落ち」という現象。
この「天井落ち」にこの夏初めて遭遇し、「なにこれ!? どうしたらいいの」と困ったカーセンサー編集部・今泉が、数分の検索を経てたどり着いたリペア専門店「ケーワークス」に助けを求めました。
無事に元通りに直るのか? 金額はいくらくらいなのか? どのように修復をするのか? 詳しくリポートします。

「天井落ち」ってなんだ?

ケーワークス
桑原徹さん
天井リペアの専門店ケーワークスの代表。これまで15年にわたり世界各国、数多の車の垂れた天井を直してきた天井リペアのスペシャリスト。メーカーディーラーから「天井が垂れたらケーワークスさんにすぐ連絡する」と絶大な信頼を得ている。

インタビュアー
カーセンサー編集部 今泉翔太
3列シートのSUVを愛する3児の父。5年前に2007年製のボルボ XC90(初代)を購入。これまで大きなトラブルは冷却ファンモーターの故障のみだったが、このたび天井落ちの憂き目にあう。過去、メルセデス・ベンツ Eクラスワゴン(初代)でも天井が垂れた経験がある。

早速ですが天井の垂れ具合は……、あーこれは結構きてますね。

あれは今から3ヵ月ほど前、4月のことでした。助手席の上のあたりの天井がホワンと垂れてきたんです。思い返せばその少し前からバイザーの生地がほわほわしていたのが予兆だったのかな。

多くの場合はルームランプまわりから垂れてきますね。天井側の造形がちょっと複雑なので。

その部分にピンポイントで瞬間接着剤を注入してみたりしたけど全然ダメで、子供たちはおもしろがって引っ張るし、1週間もしたらすっかりモンゴルのゲルの中にいるみたいになっちゃっいました。

一度垂れ始めると、そこからあれよあれよと広がっていきます。応急処置は待ち針か虫ピンをななめに刺して留めるのがオススメ。瞬間接着剤を使うと修復作業が難しくなる可能性があるので避けてください。


運転席に垂れ下がったら、前が見えなくなっちゃって危ないですからね。

天井が下がった状態だから暗いし閉塞感もあるし……。乗るたびになんかポロポロ赤っぽい粉も降ってきて汚いんですよ。

それはウレタンが加水分解されて、もろくなって粉状になったもの。天井が垂れるのは、まさに天井と生地の間にあるウレタンスポンジが湿気と熱で加水分解されてもろくなったのが原因なんです。

加水分解って、古いスニーカーのソールがボロボロになっちゃうアレですか?

一緒です。車では樹脂製のダッシュボードなどがベタベタしてくるのも加水分解ですね。空気中の水分と熱で化学反応を起こして劣化してしまうんですよ。

どのモデルで、どうなったら発生する?

僕のボルボは2007年式なんですけど、普通どれくらいで起こるんですか?

経験上、早いと製造から7年で垂れてきちゃいます。温度と湿度で加水分解が促進されるので、室内保管の車より、外に置いている時間が長い車の方が早いような気がします。だから夏場の持ち込みが多くなるんですよ。

ということは僕の車がハズレってわけじゃなくて、みんなそのうち起こることなんですね。

欧米の車は超高級車でも垂れて、うちで施工してますよ。メルセデスやBMW、アストンマーティンやポルシェだって垂れるんだから安心してください、っていうのも変だけど(笑)。

そんな超ハイエンドな車のオーナーさんも……。

アストンやポルシェはディーラーを通してご依頼をいただくことが多いので、お預かりして施工してます。しかもハイエンドモデルだと内張がファブリックじゃなくて本革やアルカンターラなので、新しい生地に張り替えるんじゃなくて、きれいに剥がして、貼ってあった素材を貼り直すので、技術的にも難しいんですよ。


“欧米の”ってことは、日本車は垂れないんですか?

ええ、日本車は内張生地と天井の間にウレタンスポンジが挟まれていなくて、生地が天井に直接接着されてるから、当然ウレタンスポンジが加水分解されることもなく、垂れてくることはありません。ごくまれに海外で製造されたモデルは、国産でも垂れるものがあります。

つまり天井落ちはふかふか仕上げの高級車の証しってことか? これからちょっと古めの輸入車を購入する場合は、ライトまわりの天井に垂れる兆候がないかチェックしてみることにします。
天井落ちの正体がわかったところでさっそく修理をお願いするが、ケーワークスでは車のオーナーが作業を手伝えるサービスを行っていた。
次回、だらしなく垂れ下がった天井が、驚きの回復を遂げる。熟練の職人はどのように直していくのか、作業の様子は後編に続く。

ライター
竹井あきら
自動車専門誌『NAVI』編集記者を経て独立。雑誌や広告などの編集・執筆・企画を手がける。プジョー 306カブリオレを手放してからしばらく車を所有していなかったが、2021年春にプジョー 208 スタイルのMTを購入。近年は1馬力(乗馬)にも夢中。
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