フォルクスワーゲンの凄さが凝縮された逸品、中古車なら最高にコストパフォーマンスが高いのがゴルフだ
2021/01/09
▲現行型ゴルフ(ゴルフ7)。VWの技術力の高さが、最も色濃く反映されたモデルだ。そしてその魅力は一見すると見えない部分に潜んでいる車には、スペック表やカタログでは推し量れない評価ポイントがある。それはフォルムを形成するデザインだったり、外からは見えない機械的部分であったり、車自体のクオリティだったりする。
そういった車の細部に宿る“こだわり”にフォーカスするカーセンサーEDGEの企画。
今回は、工業技術マニアにはたまらない「VW ゴルフに見るプレス技術」に注目したい。
“こだわり”に共感できたならば、所有の満足度はより高いものとなるはずだ。
生産ラインを見て驚愕したフォルクスワーゲンの技術力
VWは21世紀になろうかという当時に凄いことをやってのけた。他社では簡単にはできないハイクオリティなボディと、しっかりとしたプラットフォームを造る高い技術を高コストにもかかわらず、大衆モデルで見せつけたのである。
2000年にドイツのVWの工場で見たレーザーブレージングとホットプレスの工程は忘れられない。その当時、一緒に見学していた人はあまり驚かなかったようだが、筆者は正直かなり驚いた。ゴルフでは延べ70mのレーザー溶接によって継ぎ目のないボディシェルを生産していたのだ。
こんな高い技術力を要する装置を量産車で使用、しかも大衆車でやってのけるのだから・・・・・・VWグループはやっぱりすごいな、と。
継ぎ目のないボディはモノフォルムを造り、外からは見えない準外板もシームレスの美しいパネルになっている。また、通常のプレス加工ではできない「抜き勾配」といわれる難易度の高い工程では、パネルどうしをレーザー溶接で正確につなぎ合わせていた。
加えて、ウルトラハイテンション鋼をフロアパンにふんだんに使い、素晴らしい完成度のフレキシブルプラットフォームも造っていた。大衆車でこれだけ多くのウルトラハイテンを使っているメーカーは国産にはまずない。製造時は、焼けて真っ赤になった鋼をプレスするのだが、素材が良質でなければできない非調質鋼(焼き入れ焼き戻しせずに強度を高めた鋼)である。これは生産性は良いが、コストが高い。その時の技術者に引っ張り強度を尋ねたところ、驚く強度の数値であったことを覚えている。そのモデルがFR時代のパサート(2000年代前半)である。
はっきり言ってしまえば、エンジンは朽ち果ててもボディは残る。それくらいボディにコストがかかっているのだ。これはVWの哲学かもしれない。
▲1974年に初代が登場してから、日本はもちろん世界のメーカーが乗用車のベンチマークにしていると評価され続けてきたのがゴルフシリーズ。ドイツでは2019年から最新世代となる8代目のゴルフ8(写真手前)が販売されている。日本では2021年の春頃から発売予定
▲VWの質実剛健なイメージをそのまま投影したセダンがパサート。写真は1996年から販売された第5世代(B5)の後期モデル(B5.5)のもので、この世代からVWの高い技術力が徐々に自動車通の目にとまるようになってきた
▲ゴルフ7は2013年から販売されており、エンジンなど各部を随時進化させてきた。2017年5月のビッグマイナーチェンジ以降のモデルはゴルフ7.5と呼ばれているボディのプレス技術に話を戻そう。
2004年くらいからVWグループのデザインを統括していた、ワルテル・デ・シルバ氏の提案がVWにも流れていく。
彼のアイデンティティであるシャープなデザインをどのような方法で生産に移行するのか。その格闘ぶりはアウディのデザインを見れば理解できるだろう。
しかし、アウディ車は価格のレンジが高いだけに製造工程も増やす(コストをかける)ことができる。だが、ゴルフのような大衆車にはそこまでコストをかけられない。そんなジレンマの中で6代目ゴルフが登場した。5代目の柔らかなボディラインを踏襲して(デ・シルバ氏は本当は好きではなかったと思う)高いプレス技術を駆使してフェンダーやフード、サイドパネルを生産していた。この技術にも目を見張るものがある。
2021年となった今も国産車のフェンダーは、この当時(2008年)のVW車のプレス技術レベルに達していないのが現状だ。そしてそのプレス技術と、デ・シルバ氏のデザインがきちんと具現化されて極まったモデル、それが7代目のゴルフ7なのである。
ウエストラインにあるシャープなプレスの折り曲げは、ホットプレスでなければできない。ここには鉄鋼の配合や温度管理といったノウハウが詰まっている。
こんな狭いシャープな帯状のプレスに、さらにインバースしたデザインを盛り込んでいる。それは、これまで積み重ねてきた経験によって実現した技術なのである。
VW社の高い工業技術により、コスト高な製法をふんだんに詰め込むことで、ディテールに宿る技術者の魂をこのような何でもない部分にすら感じ取れるモデル、それがゴルフ7なのだ。
▲2003年から2009年まで販売していたゴルフ5。高効率の1.4L TSIエンジンをモデル後半から搭載し「輸入車=燃費が悪い」というイメージを払拭。アウディとともに「ダウンサイジング化」の象徴として優れた経済性も強くアピールした
▲2008年から2012年まで販売されたゴルフ6。プラットフォームはゴルフ5と共通も、内外装を中心に大改良を行い完成度の高さで自動車関係者を驚かせた
▲乗用車に必要な要素をすべて凝縮したゴルフ7。特に秀逸な走りに関しては車両本体価格100万円前後で買える中古車モデルの中では際立っている。年式も新しいため、安全性能や燃費性能も極めて優秀【関連リンク】
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