’68 LAMBORGHINI ISLERO
カテゴリー: クルマ
タグ: EDGEが効いている / VINTAGE EDGE
2013/05/28

GTは飽きの来ない疲れない車じゃなくてはならない
デザインは独自だが、メカニズムは最初の市販車である350GTの後継モデル400GTからほとんどを受け継いでいた。エンジンは3929㏄のV12型で、トランスミッションは5速MT。最高速度は250㎞/hと発表された。1969年からは排気量を変えずに出力を高めたイスレロSに進化している。
徳大寺 さて、今月はどんな車だい?
松本 今回はメジャーなブランドだけど車種は知る人ぞ知るマイナーなモデルです。僕も見るのは今回で3回目ぐらいですよ。
徳大寺 ほう。何だモノは?
松本 ランボルギーニのイスレロです。
徳大寺 そりゃ珍しいな! イスレロは決して派手さはないけど、確かフェルッチオさんがプライベートで乗っていたんじゃなかったかな。創業者が乗るくらいだから好みの車だったんだろうな。
松本 1968年から69年の2年間しか生産していなくて、台数はおよそ350台。当時、新進気鋭のランボルギーニとしては頑張った数字ですが、ミウラやカウンタックほど名は知られず、ひっそりと上品に潜んでいた感じがしますね。
徳大寺 今回見に行くのは何年のモデル? ファーストモデルだといいな。ほとんどのモデルに言えることだけど、シリーズ2からはデザインがうるさくなっちゃうんだよ。イスレロもサイドスリットやフェンダー回りが少し装飾的になっていったんじゃなかったかな。勿論、走りに関しては新しいモデルのほうが良いだろうけど。
松本 あ、巨匠、あれですね。間違いなくイスレロの初期のモデルですよ。サイドにスリットがなくてフェンダーにリップがありません。
徳大寺 そりゃ、68年式だな。このカンパニョーロのホイールもいいな。センターロックだよ。ミウラと同じデザインだしな。
松本 やっぱりカッコイイですねー。
徳大寺 イスレロはさ、ランボルギーニで初めてのスポーツカー、350GTVの後継車として作られたんだよ。350GTVはカッコイイよ。だってもとは天才スカリオーネがデザインして、量産モデルはカロツェリア・トゥーリングだからね。そりゃ上品さで言えばバツグンだよ。フェルッチオさんはトラクター屋さんだったけど、完璧なGTを作りたかったんじゃないかな。だからエンツォ・フェラーリに願い出たんじゃないか。
松本 そうでしたね。スポーツカー好きな人にはあまりにも有名なエピソードですね。一代で財をなしたフェルッチオさんは、フェラーリを何台か購入したものの、要求を満たさないのでエンツォに面会したいと申し込み、けんもほろろだったっていう。
徳大寺 そうなんだよ。エンツォらしいけどな。それで、聞く耳を持たないんだったら自分が作ろうじゃないかと立ち上がったのがランボルギーニなわけだよ。
松本 フェルッチオさんは、本当はこのイスレロをカロッツェリア・トゥーリングに作らせたかったでしょうね。最も信用していたようですからね。しかしトゥーリングは350GTVを作っていてこれ以上は無理だったのでしょう。さぞかし困ったことでしょうね。
徳大寺 トゥーリングの総帥、カルロ・フェリーチェ・ビアンキ・アンデローニさんは実に趣味の良いモデルを提供していたんだ。一般的にはカロッツェリア・トゥーリングの名前からイメージされるのはスーパーレッジェーラあたりじゃないか。
松本 スーパーレッジェーラの特許は素晴らしい技術力をもつデザインおよびボディ製造会社としてトゥーリング社が存在した証ですからね。最近、蘇ったんですよ。シャネルの時計で。
徳大寺 あのスペルはカッコイイもんな。そりゃ使いたいのがよくわかるよ。アストンマーティンのDB4GT、DB5だってそうだしな。あれは航空機軽量技術だよな。イスレロだってその流れはくんでいると思うよ。
松本 そのようですね。トゥーリング社は消滅してもアンデローニの意志を受け継いだ技術者やデザイナーがそのまま引き継いでイスレロを作ったのでしょう。350GTVの曲面的なウインドウスクリーンを平面的にし、次世代を予感させるようなスッキリとしたデザインのGTを作り出したのでしょうね。
徳大寺 一見おとなしいけど、フェルッチオさんが求めたのも分かる。グランツーリスモは飽きの来ない疲れない車じゃなくてはならないんだ。フェルッチオさんの言葉を思い出したよ。「日常的なモデルで、非常にコンベンショナルで完璧なスポーツカーを作りたいんだ」って。それがイスレロなのかもしれないな。




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