車に主治医は必要か?【CERC ~編集デスクのロードスター日記~ #03 】
2016/03/20
▲こちらが我がNR-Aの主治医こと「大山オート自動車部」の外観。素人の接近を頑なに拒むような店構えだが、社長はとても穏に分かりやすく各種説明をしてくれるレースに向けてNR-Aの改造が始まる
運転が上手くなりたい一心で、約10年ぶりにMT車(2代目ロードスターNR-A)を総額75万円で購入。そいつでサーキットへ繰り出しレースに出てやろうという、45歳のオッサンにしては迷走感たっぷりなカーライフに踏み込んだ訳だが、先日、ついにポイント・オブ・ノー・リターン(帰還不能点)を超えてしまった。というのも、完全ノーマル状態だったNR-Aを、サーキット走行仕様に改造したからだ。
正直、迷った。奇跡の一発的中で引き当てたグッドコンディションのNR-A。同グレードの支払総額ではほぼ最安値だったが、前オーナーの扱い方が余程良かったのだろう、ボディも内装も機関も絶好調。消耗品さえ替えればあと5年くらいはフレッシュな走りを楽しめる逸材だった。そんな素顔でも十分可愛い箱入り娘のような我がNR-Aに、外科的な処置を伴う改造を加えるのだ。心の内のためらいがどれほどだったか、想像いただけるだろう。まあ、結果的に手術は大成功で、ますます我がNR-Aへの愛が深まったのだが、そのあたりの事情はぜひカーセンサー本誌5月号の連載『CERC』をご覧いただきたい。
▲リフトに載せられた愛車は、まさにこれから手術を受ける患者のよう。ロールケージ、バケットシート、4点式ハーネス、牽引フックの取り付けで、手術は2日に渡った法定点検はユーザーの義務だが罰則はない
ところで、読者のみなさんは車の主治医を持っているだろうか? 「主治医」とは、定期点検や車検を定期的に依頼している整備士/整備工場のことだ。「かかりつけ医/病院」と例えても良いかもしれない。定期点検は近所のディーラーに出しているという人なら、そのディーラーの整備工場のサービススタッフが主治医になるだろう。
今回、我がNR-Aの改造は、群馬県伊勢崎市にある『大山オート自動車部』という、初代登場からロードスターの整備やチューニング、改造を専門に行っているプロショップに依頼した。そこの社長の人柄や確かな技術に触れ、以来私は勝手に社長を「我がNR-Aの主治医」と呼んでいる。
サーキットで思う存分走れるように車を補強するといった“特殊事例”ならいざ知らず、一般的には「整備工場」という言葉が脳裏に浮かぶのは12ヵ月点検と車検だけ、という人の方が多いのかもしれない。法定点検(12ヵ月点検と24ヵ月点検)はユーザーの義務だが、行わなくとも罰則はない。必ずしも整備工場で行わなければならない訳でも無く、ピットを備えたガソリンスタンドや大型カー用品店、はたまたユーザー自身で行うなど多様な選択肢から自己責任で選ぶことができる。西洋医学の病院にかかるか、東洋医学なのか、民間療法なのか、おまじないを信じるかは、その人次第ということだ。だから節約志向の強い人なら、整備費用は真っ先に削られる科目のひとつだろう。
▲こちらが手術後の様子。ロールケージによるボディ剛性アップと身体を包み込むバケットシートのおかげで、ドライビングフィールは以前よりグッとシャープになったそれでも主治医を持つことにこだわる理由
要は、主治医を持とうが持たなかろうが、安全に走れる(車検に通っている)状態であれば問題はないのだ。それは分かっている。それでも、私は主治医を選びたい。車の調子がおかしいと思ったら、夜の繁華街に繰り出す回数を1回、いや2回削ってでも、主治医の門を叩く。法定点検ならなおのことだ。なぜか。
ひとつは、当たり前のことだが安心感があるから。もうひとつは、普段なかなか触れることのないオイルと鉄の匂いが立ち込める機械系職人の世界に触れられたり、異業種の方たちと車談義に花を咲かせたりといった新鮮さが味わえるから。そして最後に、手をかけた分だけ車が変化するのが分かるからだ。
新車購入から半年乗っただけでも、車は確実に劣化していく。その劣化分は、整備することで100%ではないものの回復できる。それが中古車なら、劣化を食い止めるどころか、まるで一時話題になったインドのサイババばりに、以前よりも状態が良くなるミラクルだって起きることがあるのだ。
現に我がNR-Aは、主治医の執刀によるボディ補強の効果もあって、13年落ちで多少ゆるんでいた乗り味がきゅっと引き締まった。5~8歳くらい若返った印象だ。年輪を重ねたものだけが醸し出せる味もいいが、手術によって取り戻せた若々しいピチピチした感触もまた味わい深い。念のため断っておくが、これは車の話だ。この絶大なる変化は、正直病みつきになる。この若々しいピチピチ感が忘れられなくて、次なる改造に手を染めている自分が今から想像できるほどだ。これもひとつの「カスタマイズ・シンドローム」なのかもしれない。それは果たして呪いか福音か。(「カスタマイズ・シンドローム」については、カーセンサー本誌5月号の連載『CERC』でも触れてます!)
▲ロールケージ(黒いパイプ)を取り付ける位置決めをしている様子。ロールケージに当たる邪魔な部分を黒マジックで記し、そこを電ノコで切り落とす
▲こちらが余分な部分を切り落としたあとの写真。主治医いわく、横転時の乗員保護やボディ剛性強化などロールケージの効果を最大限発揮できる箇所に取り付けることが重要なのだとか
▲バケットシートは専用のシートレールを使用するため、作業も大がかりになる。1オペレーションで効率よく作業できるようにダンドリするのも名医の技のひとつ【CERCとは】
中古車情報誌『カーセンサー』の連載『CERC』のスピンオフバージョンである。カーセンサー本誌に収録しきれなかった話題を、同連載の語り手である本誌デスク本人が赤裸々に綴る。ちなみにCERCとはCarsensor Editors Racing Club(カーセンサー・エディターズ・レーシング・クラブ)の略。
【筆者プロフィール】
1970年生まれ。群馬県在住の編集・ライター。カーセンサー本誌の編集デスク担当。
2015年9月に参加したメディア対抗ロードスター4時間耐久レースでの惨憺たる結果から一念発起。運転技術を磨くべく、マツダ ロードスター(2代目)のNR-Aを購入した。
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